意識して階段を使う生活を心がけていこう

NEATのなかでも、エネルギー消費効果抜群と言えるのが階段の上り下りです。

日本のスポーツ競技を統括する日本体育協会の科学委員会が興味深い発表をしています。日常における消費カロリーを行動別に算出しているのです。

階段の上り下りで消費するエネルギーは、体重1キロあたり1分間で上りが約0.135キロカロリー、下りが約0.066キロカロリーとなっています。

つまり体重60キロの人が1分間階段を上ると約8キロカロリー、下りると約4キロカロリー、上り下りで約12キロカロリーのエネルギーを消費することになります。

日常生活で鉄道を利用したり、ビルの上層階に行く用事がある人が、エレベーターやエスカレーターに乗らず、すべて階段を使ったら1日トータルで5分ぐらいは上り下りをすることになるでしょう。

それだけで60キロカロリーの消費になる。それを1年間続けたとしたら、約2万2000キロカロリー。3キロ以上の脂肪を代謝する量になるわけです。

暴食をしないといった条件が前提になりますが、エレベーターやエスカレーターを使わず、階段の上り下りを自分に課すだけで1年で3キロの減量ができるということです。

私はエレベーターやエスカレーターしかない場合を除き、階段を使うようにしています。

こんなエピソードがあります。京都大学で教授をしていた時ですが、2階の研究室で仕事をしていた時、ある人に手紙を出す必要が生じました。

私はせっかちというか目の前のことはすぐにやらなければ気が済まない性格で、早速手紙を書き階段を下りて事務室のポストに投函しました。

階段を上って研究室に戻ってしばらくすると、もう1通、手紙を送らなければならないことを思い出して同様に階段を下りて投函。

戻ってきたら、また1通思い出してと、同じことを繰り返しました。

それを見ていた学生からは「前もって今日、何通手紙を出さなきゃいけないか考えておけば投函に行くのは1回で済むじゃないですか」と言われました。

でも、私は笑ってスルー。そういう性格は直せるものではないし、私としてはそのおかげで階段の上り下りが3回もできた、運動になってよかったやないか、と思っているわけです。

まあ、こんなアホみたいなことをやれとは言いませんが、NEATを増やすというのは、要はちょこまか動くということなのです。

▲ちょこまか動くことがカロリー消費につながる イメージ:ペイレスイメージズ1(モデル) / PIXTA

日常の“ちょこまか運動”を積み重ねよう

日常のちょこまか運動は、かなりのカロリーを消費します。

普段はデスクに向かうばかりの動かない生活をしていて週末だけジムで運動する人よりも、運動らしい運動はまったくしていないけれど、毎日ちょっと仕事をしては立ち上がり何かして戻る、数分たったら今度は外出、という人の方が1日平均のカロリー消費がずっと多くて体重も体脂肪が少ないことが多いのです。

人間の体というのは、同じ状態が3分以上続くと、システムが自動操縦状態になり、呼吸、心拍数、体温、ホルモン分泌など全身の状態が安定してしまうものです。

安定しているのはいいと思われるでしょうが、実はこれは自律神経が働いていない状態。体を活性化させ脂肪の代謝を促すためには、安定よりも、頻繁に体のスイッチを切り替えることが大事なのです。同じ状態をなるべく3分以上続けず、座っていたら時々立ち上がる、10分ウォーキングをするなら、3分は速歩、3分はゆっくり、3分はまた速歩というように切り替える。強度を変えたり、動きを変えたりすることで自律神経を働かせた方がいいのです。

まわりからは「落ち着きのないヤツだなあ」と思われるかもしれませんが。

3分ごとの切り替えは、さすがにできないと思いますが、なるべく同じ状態を続けず、動くことを心がける。また、便利になった生活に甘えて楽をせず、歩いて行ける距離だったらタクシーには乗らない、駅ではエスカレーターではなく階段を使う、という心構えを持つことが重要ということです。

トレーニングジムに通う途中の駅でエスカレーターに乗る人がいますが、私からすれば「なんて、もったいないことをしているんだろう」と思います。

階段の上り下りはお金もかからないうえ、足腰の筋肉もしっかり鍛えられる。一段一段のカロリー消費は微々たるものですが、その積み重ねは実に大きいのです。

筋トレだけでなく、NEATを増やすことも心がけていただきたい! そうすることで筋肉増強への効果は、よりアップすること請け合いです。

▲普段の生活に動きを増やす イメージ:shige hattori / PIXTA