誰しも、一人じゃ生きられない。だから、自分が心地よいと思う他者とのバランスを見つけよう。生きるうえで必ず関わる、自分以外の誰か。家族・友人・恋人・同僚など、人生で出会うさまざまな他者との関係について、日韓累計158万部を突破したベストセラー作家のキム・スヒョン氏が、どうすれば心地よい関係を築けるかを語ります。

※本記事は、キム・スヒョン:​著/岡崎暢子:​訳『頑張りすぎずに、気楽に』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

自分にぴったりの生き方を見つけだそう

数年前のことだ。とあるブログを読んでいるうちに「バリ島で一人暮らしをする」という夢が芽生えた。

ゆったりと過ごし、瞑想をして、原稿を書き、自然の中で暮らす。想像するだけで、穏やかで美しいじゃないの!

そしてついに、数年来の夢を実現すべく2週間の旅程で旅立った。バリ島は予想以上に快適で、本当に美しいところだった。

しかし、1週間も過ぎたころ、なんだかもどかしくなってきた。

私が運転免許を持っていないせいもあるけれど、公共交通機関が発達していないバリ島では、スクーターにすら乗れない私の行動範囲は知れたもの。

ホテルの近くにあるカフェで仕事をしていたら、ここがバリ島なのか自宅前のスタバなのか、わからなくなってきた。思い描いていた優雅な姿とは随分と異なるし、一人で過ごすという夢も、なんだかくすんで見えた。

朝鮮時代の儒学者・丁若鏞(チョンヤギョン)先生も、島流しにされたとき、こんな気持ちだったのかしらとまで思った私は、結局、損を承知で早々に旅を切り上げ、帰国の途についた。

今の私は、誰かと一緒に行く旅行のほうが好きだし、ほんのちょっと物足りないくらいの日程が一番心地よく、仕事をするなら、自宅前の自習室が一番はかどる。

同じ部屋にいても「寒い」「暑い」という不満が同時に出るように、誰にでもぴったりの答えなどないのだ。

長期の旅行にゆとりを感じる人もいれば、短期の旅行にときめきを感じる人もいる。会社の外に刺激を感じる人もいれば、会社の中に安定を感じる人もいる。誰かと一緒の瞬間に活力を感じる人もいれば、一人の時間に心の平穏を感じる人もいる。

旅をするとき、誰かと関係を結ぶとき、そして人生を歩むとき、幸せになる方法とは人それぞれだ。

だからこそ大切なのは経験を積んで、自分にぴったりの生き方を見つけ出すこと。誰かの夢と、誰かの楽しみを真似するのではなく、自分の夢と自分の喜びを見つけよう。

それこそが、私たちがもっと自分らしく幸せになれる方法なのだから。

▲自分にぴったりの生き方を見つけだそう イメージ:PIXTA

この世で一番幸せなことは
自分らしい生き方を知ることだ。
――ミシェル・ド・モンテーニュ(フランスの哲学者)

まわりにいる愛してくれる人たちの声に耳を傾けよう

友人と映画を見てきた。斬新でスピード感のある展開が私好みで、とても面白かった。

ところが後日、インターネットでレビューを検索したところ、10のうち8つは高評価だったものの、残りの2つは低評価だった。

手放しで大絶賛だった私としては、この低評価に全く共感できず「ライバル作品の回し者による仕業?」と疑いたくなるほどだった。

さて、また別の日に違う映画を見たのだが、今度は途中で帰りたくなるほどの、とても退屈な作品だった。きっとみんなも同じように思っただろうと検索してみたら、今回も10のうち8つは高評価で、残りの2つが低評価だった。

同じ映画を見ても人によって感想が違っているのは当然だが、否定的な評価というものは、一定数存在するのだ。

これは人についても言える。

私たちは誰からも嫌われたくないと思っているが、どんなに面白い映画も、どんなにおいしいレストランも、どんなに素敵な音楽も、すべての人に受け入れられるわけじゃないように、どんなにいい人になろうと頑張ったって、すべての人から好かれるとは限らない。

だからといって、落ち込まないで。たとえ誰かに嫌われたとしても、その事実があなたの存在自体を貶(おとし)めたりすることはないから。

▲まわりにいる愛してくれる人たちの声に耳を傾けよう イメージ:PIXTA

あなたのまわりには、いつでもあなたを好きでいてくれる人たちがいる。だから自分のことを傷つける声ではなく、愛してくれる人たちの声に耳を傾けよう。それが、注がれる愛情に対する私たちの答えだ。

不可能なことを望んでも、マイナスの感情にとりつかれるだけ。