私たちは、人生のさまざまな場面で決断を迫られます。失敗できない、後悔したくない状況においては、仕事や日々の生活が手につかなくなるほど悩み続けることも……。とくに人生のパートナーとなる結婚相手に関することで悩む人は多いようです。後悔しない決断をするにはどうすればいいのか。「決断の精度」を高める方法を論理競技王者の太田龍樹氏に聞きました。
※本記事は、太田龍樹:著『一番いい答え- 絶対後悔しない最適解の見つけ方 -』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
後悔しない決断のために「説得力の強度」を高める
自分の決断が100%の絶対的正解であることを証明するのは難しく、むしろ、証明できるのは稀です。
そこで大切になってくるのが「説得力の5段階強度」です。
決断の説得力の強さの度合いを、他者に対してはもちろんのこと、自分自身でも確認することが、より正しい決断をするためには必須となるのです。
限りなく正解に近い決断をするには、次の英単語を思い浮かべながら、説得力の強さの度合いを測る5段階で決断を評価することが有効です。
【説得力の5段階強度】
- 1段階:100%を示す「絶対に/絶対的な真実」=certainty(サーティニティ)
- 2段階:60~80%程度の「確かに/十分な信頼性」=probability(プロバビリティ)
- 3段階:30%程度の「たぶん/それらしい」=plausibility(プローザビリティ)
- 4段階:10%以下の「きっと/可能性がある」=possibility(ポシビリティ)
- 5段階:「全く可能性がない」=never(ネバー)
「私は彼女(彼)と結婚すべきか?」という場合の決断について考えてみましょう。
事実:彼女(彼)はとてもやさしい。
決断:私は彼女(彼)と結婚すべきだ。
これは1段階の絶対的決断と言えるでしょうか? 結婚すれば、楽しいことはもちろんありますが、精神的にも肉体的にも経済的にもいろいろな困難が待ち受けています。やさしさがあるから結婚するといっても「相手の経済力は?」「価値観は?」といったことも考えれば、1段階とは言い切れません。
そう考えると、この場合には、決断の説得力が「2段階くらいの強度」であると考えたほうがいいでしょう。60~80%程度の説得力があると設定します。
「決断の弱い部分」は“真逆の決断”でわかる
ただし、これで決断するのは早すぎます。ここで、いったん「結婚すべきではない」と考えてみます。
「結婚するべきである」という決断を批判するために、60~80%の強度でしかない理由、つまり20~40%足りない理由を考えてみます。たとえば、経済面と価値観の部分を掘り下げて「結婚するべきである」という決断を批判します。
その結果、第3段階の説得力だと感じてしまえば結婚すべきではなく、第2段階のレベルを保てれば結婚するべき、となります。
人それぞれ、状況が違い、考え方が違い、持つ情報の量と質が異なります。だから、誰にでも「共通して正解と言える答え」はありません。自分に合った「メリットがあり、論理的である答えを見つけること」こそ、最も賢い決断を助けるのです。
この事実から、どのくらいの強度でその決断が正解と言えるのか、と吟味することが大切です。
また、プレゼンなどで、あなたが自分の主張を発言するときも、相手に弱い部分を突っ込まれないよう、自分の説得力の強度を常に意識しておく必要があります。「説得力の5段階強度」を意識しておけば、あなたの主張も通りやすくなるのです。
「説得力の5段階強度」を考えることは、決断のためだけではなく、プレゼン・交渉・議論などの力も高めてくれるのです。