「塩少々」「塩で味をととのえる」はあり得ない!

塩はこれほど味つけに大事なものなのですが、なぜか料理のレシピ本を見ると、実にひんぱんに「塩をひとつまみ」「塩少々」「塩適宜」などという記述が出てきます。僕はこれが昔から非常に不思議でした。しょう油や味噌などは、比較的細かく、大さじ1(15cc)とか、小さじ1(5cc)と書いてあることが多いのに、なぜか塩は「ひとつまみ」「パラパラと」「塩コショウで味をととのえ」などと書かれていることが多いのです。

塩の量さえ失敗しなければ、料理が大失敗することはまれです。特に家庭料理では、出しの工夫をするよりも、塩の量のほうがずっと大事なのに、なぜそこで「塩適宜」になってしまうのでしょうか。

こういう表現が多いと「塩は適当でいいんだ」「あとで足りなければ足そう」と思う人が多くなるのは当たり前です。塩は本来の意味での「適当」=適切な相当量を使うべきで、カタカナの「テキトー」ではダメです。

たしかに入れすぎるよりは少なく間違ったほうが修正しやすいとも言えますが、おいしいパスタを作りたければ、ソースの塩分を増やすより、ゆで汁の塩分を強くしたほうがずっとおいしく仕上がります。高級な肉を使ったステーキも、新鮮なサンマの塩焼きも、「塩」の分量とふりかたが、味つけのほとんどすべてと言っていい。

だからこそ、ぜひキッチンに用意していただきたいのが「大さじ」と「小さじ」だけではなく、小さじの5分の1の1ccが量れる小さな計量スプーンと、さらにその半分の0.5cc 0.1cc用のスプーンです。1ccは塩1gにあたります。

0.8%の塩分というのは、「調理しおえた食材の重さに対して0.8%の重さ」ということ。

まず、正確に食材の重さを量り、電卓を使って0.8%の塩の量を算出することが大事。それから正確に塩の分量を量ってください。塩1gはほぼ1ccと考えてかまいませんが、粒子の大きな塩を使う場合は、計量スプーンよりもキッチンスケールで重量を量ったほうが正確です。こうしたケースがあるため、僕のレシピはすべて「cc」ではなく、「g」で統一しています。

塩は「目分量」や「カン」をあてにせず「0.8%」を量ってください。僕自身も常にそうしています。

▲「カン」で済まさず正確に量る イメージ:natsumi.k / PIXTA

ただ肉は焼き上がると水分が出て、ミディアムレアであっても、重さは焼く前の93~95%、ウェルダンなら80%ていどまでに減少します。

焼く前の重さに対して0.8%の塩をふると、食べるときには少し塩分率が高くなるのでは? と感じると思いますが、塩をふって焼く場合、塩の一部はフライパンに落ちますし、焼いてから塩をふる場合は切り口用の塩を残してふるといった方法をおすすめしていますから、レシピにあるとおり、焼く前の肉の重さの0.8%の塩でだいじょうぶです。

ただ、食材、料理によっては、食材の水分や、ゆで汁の蒸発などが2割ていどあることを見こして、塩を2割減らしたレシピにする場合もあります。