「ダイエット成功の秘訣はカロリーをとりすぎないこと」という、世の中にはとんでもない常識がはびこっています。でも、カロリー計算なんて面倒……そうなるとどうするか? 「じゃあ、食事を抜けばいい」ということになるわけです。しかし体重を減らしたいからといって、食事の量を減らしてはいけません。見直すべきは食事の質なのだとフードプロデューサーの南清貴氏は言います。

※本記事は、南清貴:著『じつは体に悪い19の食習慣 [改訂版]』(ワニ・プラス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

カロリーとは食品をただ燃やした熱量にすぎない

ダイエットとセットになって必ず持ち出されるのがカロリーですが、私はそもそも食品のカロリーに意味はないと思っています。食品のカロリーは、どのように測定されているかご存じでしょうか? 簡単にご説明しましょう。

まず食品に含まれている、糖質・タンパク質・脂質を分析して重量を測ります。これに、糖質・タンパク質・脂質それぞれを燃やしたときに発生する、1グラム当たりのカロリー(熱量)をかけ、全体の合計値を出します。簡単に言ってしまうと、食品のカロリーというのは、食品をただ燃やしたときに発生する熱量のこと。

そこには、体内でどのように消化・吸収されているかなどということは、いっさい加味されていません。

▲カロリーとは食品をただ燃やした熱量にすぎない イメージ:PIXTA

だから仮に、おにぎりのカロリーが200キロカロリーだったとして、体内に入ってからも200キロカロリーのエネルギーが生まれるかというと、そんなことはないのです。また、人によっても消化能力は違うわけですから、同じおにぎりを食べても、AさんとBさんでは発生するエネルギーは当然ながら違います。

カロリーに翻弄されることが、いかに無意味か、おわかりですね?

もうひとつ「カロリーの内容」についての問題があります。糖質とひとことで言っても、ブドウ糖もあれば果糖もある。ところが、カロリーを計算するときは、種類が違っても、ひとくくりにされます。

たとえば油脂1グラムの熱量は、すべて9キロカロリーとされていますから、有害なトランス脂肪酸もバターなどの飽和脂肪酸も、必須脂肪酸のオメガ3の不飽和脂肪酸も、同じグラム数ならカロリーは同じになります。

こんな稚拙な考え方でいいのでしょうか? カロリーに気をとられていると、本当に大事なことが見えなくなってしまう危険性があるのです。

食べていないのに太ってしまうカラクリ

ダイエット中の人から「食事を減らしてがんばっているのに、ちっともやせない」という嘆きを聞くことがあります。これも実は、カロリー計算の落とし穴。

ダイエット法を提唱する人のなかには、摂取カロリーが消費カロリーよりも少なければそれでいいという人がいます。ところが人間の体は、算数の答えを出すように単純にはできていません。

人間は、たとえ寝ていても呼吸はしているし、内臓は活動し体温を保つために熱をつくってもいます。つまり、常に基礎代謝が行われていて、一定量のカロリーは消費されているのです。

摂取カロリーが食事を制限するあまり、この基礎代謝に必要なカロリーを下回ってしまうことがあります。そうすると、体は飢餓状態になったと勝手に判断し、そのための体制を整えようとします。いわゆる飢餓スイッチですね。このスイッチが入ると、いつまで続くかわからない飢餓状態に備えて、体は入ってきた食べものを蓄えようとするわけです。

▲冬眠前のリスのように蓄えるスイッチがオンに イメージ:PIXTA

入ってくるカロリーが少なくなると、飢餓と錯覚し、炭水化物をすみやかに皮下脂肪につくり変えて蓄えようとします。その結果、食べないのにやせない! カロリーを抑えているつもりが、逆に肥満を招いてしまうことになるのです。

さんざんダイエットという言葉を使ってきましたが、そもそもダイエットというのは、やせるための食事や方法をさす言葉ではありません。本来は健康的な食事のことを言います。

ところがいつの日からか、やせるための方法全般をダイエットというようになり、今では、ほとんどの人は、ダイエットとウエイトロスを完全に混同しています。

体重を落とすことだけを目的にしたリンゴやキャベツ、納豆ダイエットは、本来のダイエットではなく、ウエイトロスのための食事法です。本来のダイエット、つまり健康的な食事をとるようにすれば、その人の適正な体重に落ち着いていきます。

現在よりも、もう少しスリムな体形が、その人本来の体形であれば、自然に体重は落ちていくでしょう。逆に、体重が落ちない人がいるかもしれません。それは、現在の体形(体重)が“本来のあるべき姿”だからです。その人本来というのは、健康で体の機能がフル稼働し、美しく輝いている状態なのですから。