第93回アカデミー賞では最多3部門を受賞したロードムービー『ノマドランド』でさらに注目されるようになった「VANLIFE(バンライフ)」。車を生活の拠点として旅をしながら暮らす、新しいライフスタイルだ。コロナ渦で生活様式が変わろうとしている今だからこそ、VANLIFEを実践しているご夫婦「とおるんよしみん」さんに、いろいろと聞いてみました。

▲とおるんよしみんさん

ヤフオクで購入した「キャラバン」をDIYで車中泊仕様に改造して、2019年6月1日から車中泊で日本一周の旅をしながら、YouTubeやブログなどで活動している、とおるんさんとよしみんさん。二人で一緒にいることを第一優先にするために会社を辞め世界一周の旅に出発、そして2019年6月から現在もバンライフをしながら日本一周中です。

バンライフの始まりは世界一周の旅!?

――今日はよろしくおねがいします! おお、もしかして車の中ですか?

よしみんさん&とおるんさん よろしくおねがいします! あ、はいそうなんです(笑)。

――すごく、すっきりというか広く感じますね! 今は駐車場ですかね?

よしみんさん いやいや、じつは後ろにいろいろ荷物詰め込んでいます(笑)。いま千葉の七里川にあるRVパークにいるんです。(画面に千葉特産のピーナッツを使ったおせんべいを見せながら)

――ブログのプロフィールを拝見させていただいたのですが、世界一周をしてから日本一周をしているんですね。そもそもバックパッカーなどやられていたんでしょうか?

よしみんさん 会社員だった頃は、GWなどまとまった休みのときに国内旅行も海外旅行にも行っていたのですが、本格的に長期の旅というのは会社を辞めてからですね。「会社やめて何をしよう……」と人で話し合って、私のずっと前からの夢だった世界一周、日本一周をしよう! となって、先に世界一周しよう! となりました。

――いきなり世界一周はすごいですね(笑)。どのぐらい行かれていたんでしたっけ?

よしみんさん 3か月ちょっとですね。船でいろいろな所を回りました!

――満場一致で世界一周に行こうよ、という感じだったんでしょうか?

とおるんさん そうですね。妻の夢が世界一周、日本一周だったので好きな人の夢は叶えてたい! と思って世界一周することを決めました。

――私も長期で休みが取れれば旅は行きたいと思いますが、いきなり世界一周は躊躇します()。この世界一周中に車中泊というのを教えてもらったとのことですが。

とおるんさん 世界一周の旅の船内イベントで、キャンピンカー好きが集まる企画があって、自分も興味があったんで参加しました。そこで初めて車をDIYで車中泊仕様にして、その車で車中泊旅をするというのを知りました。

――そのあとに現在乗られている車を購入して、DIYされたんですか!

とおるんさん はい、わりとすぐに。

よしみんさん 帰国していろいろとネットで車を探していたのですが、オークションで今の車を見つけて、これだ!って。

▲見ているだけでワクワクする、とおるんよしみんさんの車!

――すごい行動力ですね! ちなみに、どちらがバンライフに興味があったんですか?

とおるんさん 車中泊はけっこうお互いかもですね。

――おふたりとも車で寝泊まりしながらの旅というのに憧れがあったんですか?

よしみんさん 正直、なんか憧れというよりは、車に寝泊まりしたほうが経済的に安くすむし、実は飛行機とか船とか乗り物が苦手で、唯一車は酔わないので気が楽に旅ができるという感じからですね。荷物もいっぱい運べるし。

――なるほど、自分たちの旅のスタイルと合致したんですね。ちなみに、一番最初に車中泊で行ったところはどちらですか?

よしみんさん  一番最初に行ったのは、神奈川県の厚木ですね。今乗っている車を引き取りに山口県から厚木までヒッチハイクで行きました。

――ヒッチハイク!?

よしみんさん はい。ヒッチハイクをしながら厚木まで車を取りに行った帰りに車中泊をしました。何も装備が無かったので、後ろに寝袋だけで寝るって感じでしたけど。

――ヒッチハイクで帰りにそのまま車中泊……なかなかすごいですね(笑)。車内もまだ改造していない感じですよね。

よしみんさん 車内は何もない状態だったので、めっちゃ背中が痛くて。

――今は、いろいろとDIYでカスタマイズされているって感じですね。基本的に自分たちでされているんでしょうか?

よしみんさん 自分たちでDIYしました。めちゃくちゃDIYをしているというよりは、最低限車内で寝れるようにベッドと収納スペースを作りました。

とおるんさん 寝床はダブルサイズのベッドぐらいで、下に収納ができるようにしています。

――ベッド下が収納スペースなんですね。

とおるんさん そうですね。簡単な作りですが。

〇ベッドと収納ボックスの製作の様子[とおるんよしみん VANtuberチャンネル]

――ニュースクランチで連載していた車中泊旅漫画の『渡り鳥とカタツムリ』に出てくる、つぐみさんが乗っている車もベッド下が収納スペースになっています。荷物(服)が多いキャラなので全部そこに収納しているという設定ですが(笑)。

よしみんさん うちは天井にも収納スペースがあります。

――天井の収納ですね、それは突っ張り棒かなんかで固定されているんでしょうか?

よしみんさん これはイレクターパイプと100円ショップの金網を連結させて作ってますね。けっこう強度があって取り出しやすいので、毎日使うものとかを入れてます。

――100円ショップのもので作られているんですね! 『渡り鳥とカタツムリ』のつぐみさんも、旅の途中で雲平君の車を快適にするために、100円ショップで購入したものを駆使して収納を作ってました。車中泊しながらドリルで穴開けテーブル作ったりとか(笑)。

よしみんさん 私たちは旅に出る前に全てDIYは終えて出発しました。旅先のDIYは作業場所が少ないので、なかなか難しいですよね。

▲天井にも収納が! 限られたスペースならではの工夫

――たしかに実際には作業する場所の問題はありますね。ちなみに一日のスケジュールはどういった感じでしょうか?

よしみんさん 日によって変わりますが、ざっくりとだとこんな感じですね。

▲とおるんよしみん夫婦のとある1日の過ごしかた

――わりと朝早くからパソコンなどの作業をされているんですね。というか、そのあとの温泉がいいですね。羨ましいです(笑)。やはり、行った先の温泉は旅暮らしの醍醐味ですよね。

とおるんさん そうですね〜。車旅をする前は温泉巡りをしたことなかったのですが、今は日本各地の温泉を巡ってます。自然の中にある野湯や秘湯など好きです。

――基本的にお風呂などはどうされているんでしょうか?

よしみんさん そのときの場所にもよるんですが、温泉施設だったり、銭湯だったり。

――なるほど、その都度で近場の施設を探して利用されている感じなんですね。車旅だからできる感じですね。観光地に行った場合も、車ならではみたいな場所に行ったりするんでしょうか?

よしみんさん 私たちは自然が好きなので、公共交通機関では行けないような場所にも車で行きます。行く場所は、行った先に住んでらっしゃるフォロワーさんに聞いて行ってみることもあります。

――なるほど、地元の人しかしらない名所なんてのもありますからね。自由が利く車ならではですね。観光をする日など決めてるんでしょうか?

とおるんさん 観光などは晴れてる日にして、雨の日は仕事することが多いですね。

よしみんさん 晴れた日は、季節の花(菜の花や桜など)とかをSNSに投稿するために撮影しに行ったりもしてます。

――土日や休日を気にせず、今日は晴れたから観光に行こう! と1日の行動が天気に左右されるのは大変な面もあるかと思いますが、なんかこう原始的な感じがすごく羨ましいです。

よしみんさん 富士山を見たくて山梨に行ったんですけど、ずっと雨が降っていて、車の中で晴れ待ち状態でした。

――晴れ待ち(笑)! それは旅のスケジュール的にも大変ですね。とおるんよしみんさんの1日のスケジュールをいただいたんですが、会社でお仕事をされていた頃と比べて感覚が変わってきたことなんてありますか?

とおるんよしみんさん 曜日感覚がなくなりましたね。

――曜日ですか! なるほど、たしかに旅では感覚が薄れそうですね。

よしみんさん 周りに人が増えてきて、大型連休か!って気づくみたいな(笑)。

――かなり解き放たれた感じですね~。おふたりは大まかな旅のスケジュールなど詳しく組み立てたりするんでしょうか?

よしみんさん あまり先のスケジュールは立ててないですね。今日、明日くらいの予定を立てるぐらいですね。

――明後日はまだどこに行くか決まってない感じなんですか?

とおるんさん そんな感じです。でも、基本的にはよしみに立ててもらっていて、僕は気になったときに「明日どこ行くの?」って確認します。

――マジですか(笑)。でもお仕事もされているので、そこら辺は大丈夫なんですか?

とおるんさん そうですね。僕たちはゆっくりと旅をしたいと思っているんですが、仕事や取材が入った場合は、大移動をするときもありますね。

よしみんさん 実は2〜3日前まで三重県にいて、急遽、東京と千葉で仕事のために移動して、そのあと山口県に移動するんです。(取材時は千葉県)

――えええ! だ、大移動じゃないですか。でも、基本的には時間に囚われない旅をされているおふたりにとって、1年というのは長くなりました? それとも短くなりましたか?

よしみんさん う~ん、どうだろう? 長さはあまり変わらない気がしますね。でも、旅をしているといろいろなことが起こるので、たくさんの思い出ができていますね。

――一日一日の物事が印象的に残っているというのは、旅暮らしならではの感じがしますね。ちなみにバンライフでの旅のメリット、デメリットなどはありますか?

とおるんさん メリットは自由な旅ができること、公共交通機関では行きづらいようなところに行けるですかね。

――公共交通機関で行けないようなところは確かにそうですね! 『渡り鳥とカタツムリ』でも寒立馬を見に行ったりしてます。ちなみに、おふたりは最近そういったところに行かれたりしましたか?

よしみんさん 最近行ったのは、和歌山県のウユニ塩湖と呼ばれている「天神崎」です。夕日が落ちるときに岩礁にたまった水に綺麗に夕日と人が反射して絶景でした。2人とも自然が好きなので、よく自然が見れるところに行きますね。

――和歌山県のウユニ塩湖! 見てみたいですね。

とおるんさん 夫婦のメリットとしては会話が増えるというのもありますね。

よしみんさん バンライフでの旅なので「今日何する?」「温泉に行く?」「何食べる?」や、お互いの感想とか自然に話すこととかが増えますね。

――そうなんですね。でも、おふたりとお話しているとすごく仲良しで、もともとコミュニケーションがとても取れているご夫婦だなと感じます。

よしみんさん 会社に勤めていた頃は、私が寝てるときに夫が帰って来るみたいに、お互い生活リズムが違っていたので、会う時間が少なくて会話する時間がなかったんです。

――バンライフでの旅をすることによって会話をするタイミングが増えたんですね。でも、おふたりケンカすることなんてあるんですか? よしみんさんは朗らかでめちゃくちゃ明るいし、とおるんさんは癒し系の口調とトーンなので(笑)。

とおるんさん 僕たちは今まで喧嘩はしたことないです。知り合いのバンライファーからは「優しいから仏みたいだね」といわれました()

――わかる気がします(笑)。

よしみんさん 怒ったところを見たことがないかも……あっ1回あるかな。

▲いつも笑顔のおふたりは本当にケンカが想像できない

――よしみんさんですら見たことないってすごいですね……。その1回が気になります(笑)。あとはデメリットなどはありますか?

とおるんさん そうですね~、デメリットは車中泊場所や銭湯、コインランドリーなどの場所を毎回調べないといけなかったり、電気や水に限りがある、夏冬の気温や荷物を少なくしなくちゃならないことですかね。

――荷物を少なくするというのは大変そうですね。生活をしながらなのでけっこう増えそうですし。

よしみんさん とおるんは靴が好きで私も服とかすごく好きなので、狭い空間ですが、実は服は100着、靴は10足といっぱい入ってます。

――荷物を少なくするというのが命題というか努力されているところなんですね。

よしみんさん 服も全部持って行きたいところですけど、それだと厳しいので、なるべく持っていくものも選んでいます。

――『渡り鳥とカタツムリ』でも旅の途中で服を買い足すということがあったんですが、おふたりも買われることはあるんでしょうか?

よしみんさん 1週間前くらいに(笑)。

――最近あったんですね(笑)。ちなみに、バンライフでの旅で“たまらない瞬間”というのはありますか?

とおるんさん 僕はやっぱり自由に旅ができたときですかね。気が向いたらあそこに行こうみたいな感じで、急な予定変更ができるってところがたまらない感じです。

――行きたい所にすぐ行ける、車ならではの機動力ですよね。バンライフで旅を初めて2年以上とお聞きしましたが、お互いの関係性など変わった点などありますでしょうか?

よしみんさん 2人の会話が増えたので、よりお互いがわかり合えるようになりましたね。

とおるんさん お互いの小さい変化に気づけるようになったし、ほぼ24時間一緒にいるので、考え方とかはちょっと似てきましたね(笑)。

――最後にこれからバンライフをしてみたいという人たちにメッセージをお願いします。

とおるんよしみんさん 私たちはもともと会社員で安定が大好きでした。その頃は将来のことを考えすぎたり、世間の目を気にしたり、本当は旅をもっとしたいけど、怖くて一歩踏み出せなかったです。

しかし、結婚して「本当にこれからの人生これでいいのか?」と2人で話し合い、10年以上勤めた会社を2人で退職。その後、世界一周、帰国後はバンライフで日本一周しています。

正直、今も不安もあります。でも会社員の頃はこれから先このまま我慢し続ける人生を想像したらもっと不安でした。どちらも不安なら、一歩踏み出して「旅をしたい」という自分に素直になる。

この選択をしてことに後悔はありませんし、今は日本各地でいろいろな景色を見たり、ご当地グルメを食べたり、いろいろ感じながら2人でのバンライフが楽しいです。

でも正直、会社を辞めて家の引き払ってのバンライフは、ほとんどの方がかなり勇気がいると思います。そのため休みの日だけキャンピングカーを借りて、週末バンライフをしてみるのは手軽なのでどうですか?

最近はキャンピングカーや、おしゃれに車内を改造したバンのレンタルもあるので、DIYに自信ない方も、車を買う予定のない方にも手軽にバンライフができる環境が整ってきてます。

実際に車をレンタルしてバンライフをやってみて、もし楽しかったら家を引き払って毎日バンライフがおすすめです。毎日バンライフはめっちゃ楽しいですよ♪

バンで回る旅は、新幹線や飛行機を使った旅とは違う楽しみ方ができますよ♪ バンライフに興味を持ったら、ぜひ行動してほしいですね。楽しいですよ!

――とおるんよしみんさん、ありがとうございました!! おふたりが運営されているバンライフブログでは車中泊初心者や車中泊女子に向けて、車中泊やバンライフの疑問や役立つ情報をわかりやすく発信されています。車中泊をしてみたい! 車で旅をしてみたい! と思った方はぜひ見てみてください。

プロフィール
 
とおるんよしみん
とおるん:1988年4月21日生まれ 山口県出身
よしみん:1988年5月2日生まれ 山口県出身

2018年9〜12月 船(ピーズボード99th)で世界一周、2019年6月からバンライファー夫婦として日本一周中。Instagram・Twitter・YouTube・ブログなど多方面にてバンライフでの旅を発信中。