オンライン商談では画面越しということもあり、相手の反応がわかりにくいという問題があります。コロナ禍でオンライン営業が普及したことで、すべての営業パーソンにオンラインでビジネスを進めるスキルが求められている時代。元リクルート“最強営業部隊”出身で伝説のトップセールスマンだった大塚寿氏は、こんなときこそ営業の「方法論」を活用するべきだと言います。

「相手の反応がわかりにくい」への対処法

▲相手がどんな反応をしているかわかりにくい… イメージ:PIXTA

オンライン商談で、最も厄介なのが「相手の反応がわかりにくい」こと。オンライン商談の最大のネックに違いありません。そこで、ここではそのネックに挑むために、3つの方法を紹介しておきます。

【1】思わず相手が話し出してしまう「呼びかけ話法」

「呼びかけ話法」というのは、オンライン商談中に相手の役職や苗字を連呼しつつ、個別に呼びかけながら商談を進める方法です。

熟練していれば、その上に「MC話法」といってテレビのワイドショーのMC(司会者)が、コメンテーターやゲストの名を次々に指名して会話を回すように、参加者にコメントを求める方法もありますが、主導権を取らないと成立しないので「呼びかけ話法」のほうが無難です。

私が「呼びかけ話法」に初めて触れたのは、リクルートの新人時代です。当時「営業の天才」といわれていた先輩や、他部門のトップセールスの先輩に同行させてもらって気づいたのですが、そういう人たちは相手を役職で呼び、必要以上に連呼しているように感じたのです。

「〇〇部長の課題感としては~」「〇〇課長、この2つ目の特長については、ご理解いただけましたでしょうか?」と個々に呼びかけて反応を確認していたのです。それを模倣するようにして、すぐにその威力を実感しました。

人は名指しされると、脊髄反射的に反応してしまう生き物です。この特性をオンライン商談に活かさない手はありません。ぜひ、明日から顧客を役職名、もしくは苗字で連呼して、反応を確かめてください。

【2】「例えば話法」を使えば相手の反応がわかる

相手の反応がわかりにくい場面では、あえて「例えば、御社がこのSFA(営業支援システム)の導入を検討するとしたら、まずは何が障害となりそうでしょうか?」のように「例えば~」で反応が出やすい前提を作ってしまうのが有効です。

この方法と【1】の「呼びかけ話法」を組み合わせて用いるのもお勧めです。

【3】相手の反応を増幅させる「ペルソナメソッド」を習得する

「ペルソナ」とはパーソナリティーの語源にもなっていますが、もともとは古代劇の「仮面」の意味だそうです。つまりペルソナメソッドというのは、営業のときは“素のままの自分”ではなく、他のキャラを演じましょうということです。

素の自分なら「こっ恥ずかしい」「わざとらしくてイヤ」と感じることであっても「売れる営業パーソンの役割を演じるのだから」と割り切ってしまえば、できるようになるという発想です。

私が営業に向き・不向きはないと主張している背景には、このメソッドの効果を実感してきたという事実があるのです。

▲営業用の仮面を持つことで商談を円滑に進める イメージ:PIXTA

ハイテンションでジェスチャーも大きく

それでは、このペルソナメソッドをオンライン商談でどのように活用すればいいのでしょうか。端的にいえば、相手の反応が増幅されて判別しやすくなるように、わざとらしく演じようということです。ここで重要なのは、キレ味のいい営業は常にわざとらしいくらいの演出があります。それを模倣して欲しいのです。

オンライン商談では、いつもの1.25倍から1.5倍くらい盛って欲しい。それには、わざとらしくするのが一番やりやすいのです。具体的には最初だけでいいので、ビックスマイル、笑顔が苦手な人は歯を見せるようにしましょう。

ジェスチャーも、いつもより大きく、大げさに。声もいつもより大きく、1.25倍を目安にしてください。これもコールセンターのノウハウですが、声は大きくするより「前に出す」イメージにするほうがいいかもしれません。

そして、最後はテンションですが、これも1オクターブアップ程度アップして、ハイテンションにするといいでしょう。こうしたペルソナメソッドによって相手もつられるので、反応が増幅されて判別しやすくなるのです。

※本記事は、大塚寿:著『〈営業サプリ式〉大塚寿の「売れる営業力」養成講座』(日本実業出版社:刊)より一部を抜粋編集したものです。