コロナ禍でオンライン営業が普及した今、すべての営業パーソンが「オンラインで商談を進める」スキルを求められています。元リクルート“最強営業部隊”出身で伝説のトップセールスマンだった大塚寿氏が説くノウハウは、超実践的かつ具体的です。「人間関係が作りにくい」また「一方的な説明に終始してしまう」という、オンラインならではの問題への対処法を教えてもらいました。
「2分の法則」で人間関係を構築しよう
まずは「人間関係が作りにくい」への対処法です。
対面での面談もそうですが、とくにオンラインでは「さっそくですが…」などと商談の開始早々に本題に入らないこと。絶対に初っぱなから商品説明を始めてはいけません。それだけで営業に不慣れな印象を与えてしまいますし、案件化率も最低になってしまうからです。
必ず、最初の2分ほどは商談の場作りのために使う、という意識を持ちましょう。それを「2分の法則」と呼んでおきます。商談の成否は「最初の2分で決まる」といったら、言い過ぎですが、最初の場作りはそれに近い重要度があります。
肝心なのは“その2分”をどう使うかですが、オンラインの場合はリアル商談での雑談とはちょっと異なるニュアンスになります。
既存顧客には、
- 共通の話題(関係する話題)
- 相手のプラスになるであろう情報
- 相手の会社や業界について「よく知っている」と評価されそうな情報
- 相手が興味、関心を示しそうなネタ
- 時事ネタと今日のメインの話の接点ネタ
などから選択するといいでしょう。
初めての顧客の場合は、お互いの簡単な自己紹介から始めることをお勧めします。オンライン画面の背景に名刺の内容を映している場合であっても、名刺交換ではないので、相手の印象に残る自己紹介を行ったほうが効果があります。
その際のコツですが、営業パーソンは自己紹介というより「自分プレゼン」の意識で臨むほうが相手の印象には残ります。
「呼び水話法」で相手に話をさせよう
次に「一方的な説明に終始してしまう」への対処法です。
よほどの商品力のある商材でない限りは、一方的な説明では案件化率も受注率も間違いなく低迷するに違いありません。なぜなら営業は「話すこと」ではなく「聞くこと」だからです。しかも案件化率の高さは、商談中の相手とのやり取りの回数と比例するものです。
ですから、ただでさえ一方的になりやすいオンライン商談では、意図的に相手に話をしてもらう工夫が不可欠なのです。そのためにお勧めなのが、相手に話をさせる「呼び水話法」です。ここで、代表的なものを紹介しておきましょう。
(1)状況質問
こちらがなにかを解説・説明した直後に「現状、御社はどのような~」と、相手の状況をヒアリングする質問を投げます。
(2)関連質問
事例を話したり、他社の課題や他社の「Before After」などを話した直後に「御社の場合ですと~」と、その内容と関連する質問をする方法です。
(3)示唆質問
現状で好ましくない事象がある場合「その納期遅れによって、実際にどんな問題が~」と、それがどんな重大な問題を引き起こすかを問う質問になります。
(4)事例
事例を紹介すること自体が、相手の興味・関心を喚起することになるので、相手の現状に近い事例を選んで紹介すると、自然に相手からの質問やコメントが出やすくなります。できれば、一方的に紹介するのではなく、途中で何らかの状況質問や関連質問、示唆質問を織り交ぜるのが理想です。
(5)ここだけの話、耳より情報
多くの営業パーソンがやる方法ですが「ここだけの話」と断ったうえで、耳よりな情報を、“あなただけに”というスペシャル感を演出しながら話すのも、相手のリアクションが出やすくなるので「呼び水トーク」としては有効です。
ほかにも「ブツ切り話法」を使うと相手は話しやすくなります。これは、昔からあるアウトバウンド系(発信業務)のコールセンターでのノウハウの応用になりますが、とにかく、センテンスを短く区切って「ブツ切り」にして話す方法です。
当たり前といえば当たり前なのですが、センテンスを短く区切ると相手には聞きやすいのです。間が多くできるので相手も口を挟みやすくなりますし、自然に一方的感は解消されます。
また、オープンクエスチョン「何か質問ありませんか?」の自粛という作法もあります。オンライン商談で「何か質問ありませんか?」と聞きたくなる場面では【Yes or No】や【A or B】で回答できるクローズドクエスチョンのほうが、相手が回答しやすい分だけ有効になります。オープンクエスチョンは「関連質問」に限定するなど、なんらかの制約を設けて行うようにしましょう。
※本記事は、大塚寿:著『〈営業サプリ式〉大塚寿の「売れる営業力」養成講座』(日本実業出版社:刊)より一部を抜粋編集したものです。