風俗業界でもホストと同じような現象が・・・

女性が働く風俗店においても、同じようなことが起きていた。

▲風俗街 イメージ:PIXTA

デリバリーヘルスという無店舗型の店がある。店舗を持たず、ホテルや自宅などへ女性を派遣し、性的なサービスをする風俗店のことだ。緊急事態宣言の最中も、こうした店のほとんどが営業を継続していた。

個室で1対1で会う形態とはいえ、見知らぬ者同士が濃厚接触をするので、少なからず感染が起きていたと推測される。なぜこうした風俗店は休業要請に従わなかったのか。オーナーの意見が次だ。

「風俗店で働く子は、社会的に孤立している子が多いよね。実家と縁が切れているとか、シングルマザーだとか。家がなくて、店の寮で寝泊まりしながら全国を転々としている出稼ぎの子もいるよ。彼女たちはお金がないから風俗に来ているうえに、お給料は出来高制だろ。だからコロナだろうとなんだろうと、働かなければならないんだよ。コロナで休業要請が出たときも、女の子のほうから『休業しないで営業を続けてください』って言われた。

あとは、コロナで失業した子が働かせてくれってやって来たこともあった。国の要請に従うのは簡単だけど、もし店を閉じたら、どうなるかわかるか? 彼女たちはお金を稼がなければならないから、個人売春をはじめることになる。客とトラブルになったり、半グレにカモにされたりする危険な仕事だ。そんなことをさせるなら、店の営業を続けて安全に働かせてあげたほうがマシだろ」

風俗の市場規模は5兆円ともいわれている。出版業界の市場が1.5兆円くらいなので、その3倍以上だ。そんな巨大市場であっても、風俗業界は社会の片隅に追いやられており、自らの職業を公にすることさえできない。だからこそ、彼らは社会に助けを求めず、自力で生き抜いていこうとする。

こうしてみると、夜の街と昼職との間には、大きな溝があることがわかる。普段は曖昧になっているけど、コロナ禍のようなことが起きたときに、一気に分断となって現れる。それがバッシングへとつながるのだ。

※本記事は、石井光太:著『格差と分断の社会地図 16歳からの〈日本のリアル〉』(日本実業出版社:刊)より一部を抜粋編集したものです。