小説未読の人は原作を知る良いきっかけに!

ただドラマをなぞるだけでは、コミカライズの意味がない。細かくコマを割ってキャラクターの表情を描いていける漫画ならではの心理描写で、コミック版『2gether』は、あの愛すべきストーリーを読者に再体験させてくれる。

そのうえで、ドラマとの違いを楽しんでみるのも面白い。大筋は同じだけれど、漫画はドラマではなく原作小説を準拠としているため、ポッキーゲームがキャンディになっていたり、細かいシチュエーションがかなり変わっている。

さらに、サラワットにはプーコンのほかにフームワットという弟がいるなど、ドラマでは入りきらなかったキャラクターの周辺情報も盛り込まれていて、小説未読の人にとっては原作の『2gether』を知るいいきっかけになるはず。

1巻だけではその伏線は明かされてはないが、序盤でタインがイヤホンを片方だけ失くしているというエピソードが入っている。イヤホンといえば、サラワットとタインの関係を象徴するアイテムのひとつ。片方だけ残ったイヤホンを見て「寂しそうだな、お前…俺と同じだ…」とタインが自分を重ねるモノローグは、非常に暗示的だ。

▲『2gether』第1巻より ©ジッティレイン/奥嶋ひろまさ

このイヤホンは、きっとこれからサラワットとタインをつなぐキーアイテムとして展開していくはず。「ペア」があふれる世の中で、自分だけの「ペア」を見つけられないタインが、どうやってもう片方のイヤホンを見つけていくのか。このあたりがコミカライズの大きな見どころとなりそうだ。

不思議なもので、本当に好きな作品は何度見ても飽きない。もう何十回も見たはずなのに、同じ場面で同じように涙を流すこともあれば、逆に今までなんとも思っていなかった場面が、急に胸を突き刺してくることもある。いつまでも自分の中で生き続ける作品は、まるで鏡のように今の自分を鮮明に映し出してくれるものだ。

きっと、この『2gether』も多くの人にって、そんな作品だろう。ずっと昔から使っているブランケットのようにしっくりと肌になじみ、お気に入りのブルーハワイのように爽やかな気持ちにさせてくれる。

それはドラマでも漫画でも変わらない。たとえちょっと離れていても、会えばたちまちあの頃にタイムスリップする。そんな幼なじみみたいな作品だ。

もし、この漫画から『2gether』を知った人がいたら、ぜひドラマも見てほしい。ブライトが演じるクールなサラワットや、ウィンが演じるキュートなウィンにたちまち恋におちるはずだ。

そうやって、いろんな人の手によって表現されながら、いつまでもいつまでも語り継がれていくことが、作品を愛するファンにとっては何より幸せなこと。『2gether』はそれに足るだけの輝きを持った作品なのだから。