まったく売れなかった「エラーをしないグラブ」

とは言え、ミズノ発の数々のアイデアにも失敗はあります。

それは2006年のこと、野球界を変えた発明〈ビヨンドマックス〉に続けと、これまた斬新な発想の軟式野球用グラブがミズノから発売されました。

▲フィールディングマックス 出典:『ミズノ本』(小社刊)

その名は〈フィールディングマックス〉。軟式のボールは、プレイヤーがグラブの捕球面でしっかりキャッチしたとしても、ポケットにすっぽりとは収まらずに、跳ね返ってしまいがちです。せっかくいいプレイをしたのに、それが原因でグラブからボールが飛び出してしまい、結果エラーとなることもしばしば。

そこでフィールディングマックス。「エラーしにくい」がウリのグラブです。その最大の特徴はボールを捕るグラブのポケットにありました。入り口につけた4つの突起物。本来ならスムーズな革である部分に、ウレタン製のツメを4つつけたのです。

「これならグラブに入ったボールが、グラブから跳ね返って出ていくことはない」と、軟式野球での困りごとの解決策になるだろうと、絶対の自信でリリースしました。

が、そのウレタンの4つのツメ……「マジッククロー」と名づけたのですが、その見慣れないパーツに野球人の反応はイマイチ。結果として売れ行きはサッパリ、在庫の山をつくってしまいました。

その理由の多くが、なんとも皮肉なもので「このグラブでボールを捕るのはズル」だと言われたのだとか(笑)。

ビヨンドマックスでホームランを打つのはOKだけれど、フィールディングマックスでエラーを減らすのはダメ……。なかなかどうしてビジネスは難しいものです。