こんにちは!ロサンゼルスからやってきました。風の時代の風雲児、風野又二朗です。

今、風野は、こんなところにいます。

▲風をあつめて、巻き起こす

美しい海。美しい島々があるこの場所は、とても良い風が吹いています。

このところ、少し忙しい日々に追われていたので、今、ここで心を落ち着けて、人生を振り返る事にしました。

最近、心のアクセルをずっと踏み続けてきたので、一度、心をパーキングに入れて、ここに停車して、海を眺めながら、ボーッとしました。

1時間か2時間ぐらい経ったでしょうか、何も考えてないつもりが、気がついたら、次々と俳優たちの顔が浮かんできました。

俳優という仕事。

とても不思議な仕事だなあと、ぼんやり考え始めました。よく、俳優さんは芝居ができるから、嘘が上手いでしょう。という声を耳にするのですが、俳優は、嘘が上手くありません。

少なくとも、風野が普段接していて、“良い俳優”だなあと思う人たちは、嘘をつくのが全くもって下手な人たちが多いです。え?と不思議に思う方もいるかもしれません。

だって、その人ではない何者かになっている訳ですから、それは嘘ではないのかと思われるかもしれませんが、嘘ではありません。俳優は、それを本当だと思ってやっているからです。

そこに本来存在しないはずの人間に、全身全霊をかけて命を吹き込む行為は、嘘があってはできないからです。

よく現場で起きることとして、俳優が「ここでこういうセリフにはならない気がする」といった発言をする事があります。これは、脚本批判でも俳優のワガママでもなくて、実際本人がその人物になっているからこそ、実際現場に立ってみて見えて出てくる発言です。これは、そこに嘘がないからこそ出てくる発言であり、またその状態で出てくる発言も嘘じゃないわけです。

もちろん、脚本家や監督はそのセリフの意味がそこだけではなく、そこには出ていない別の人物だったり、別のシーン、あるいは作品全体に影響する場合があることを俯瞰で捉えているので、俳優の心の整理、あるいはリアルだけで必ず変更する訳ではありません。

先ほど、さらっと”良い俳優”と書きましたが、風野が思う良い俳優とは別に上手い、テクニックがある俳優ではありません。もちろん、上手いしテクニックがあるんですけど。それだけじゃない。なんだか揺れている人です。揺らめいているというか、不安定な人です。

不安定というのは、精神的なものではなく、芝居に対して、こうだ!こういうものだ!と何かを確信してない人、分かったつもりでやってない人のことを言っているのかもしれません。

足のつかない、サドルの高い自転車をフラフラ倒れそうになりながら運転している俳優、といった感じです。自転車って毎日乗っていたらどんどん上手くなりますよね。でも、上手くならない俳優というか、努力とか技術が見えてこない俳優が好きです。

つまりそれは、自分が培ってきた経験という背もたれに寄りかからない事なんではないかと思っています。

これは、とても難しい。それは、ある程度仕事をしてきた人間ならば、瞬時に思いつく、かつての正解をいくつか持ってますから。これはどの分野でも同じだと思います。むしろ、その正解の数と経験を持って、上司になったりリーダーになれる訳ですから、普通はその方が良いと思います。

でも、俳優は違います。1度出した正解は、クランクアップと同時にさっさとゴミ箱に捨てないといけない。とても不安で、怖い行為だと思います。でも、良い俳優たちはそれを毎回繰り返しているように思います。

ここで、俳優あるあるなのが、1度出した答えのようなものが伝わると、その人に似たようなオファーがいく場合です。これは、アメリカではタイプキャストとも言われたりしますが、こうなると、かつて捨てたはずの自分の答えをまた作っていくような感覚になる場合があると思います。

▲風をあつめて、巻き起こす

風野が大好きな俳優がある日こんなことを言いました。

「役作りはしないです。だって、役を作らなきゃいけないなら僕である必要がないですから」

また、別の大好きな俳優はこんなことを言いました。

「自分の中からこの人物は簡単に出てこない。あらゆる準備をする」

また、ある俳優は

「そもそも、自然な芝居とか、リアルな芝居って言いますけど、カメラが目の前にある時点で、自然でもリアルでもないっすよね」

うん。本当に人それぞれだわ。みんな違ってみんな良い、わ。そもそも、同じじゃない人達が集まって作るから、その作品は大変だけど面白くなる訳だし。

このコラムだって、10人の俳優が見たら、10通りの「違うよ、風野さん」って言われると思います。そもそも、風野も何かを分かったつもりは1度としてないし、できれば明日、また新たな発見をしたいなと思ってます。

でもね、一つだけ。全俳優たちの意見が満場一致になる事があるとすれば、それは、人生をかけて、比喩ではなく、命がけで作品に取り組んでいるということ。色んな角度から集まった人たちだけど、それだけは、間違いないなと思ってます。

▲風をあつめて、巻き起こす

この海にはたくさんの島が浮かんでました。この海には全部で、700島ぐらいあるそうです。どの島も一つとして同じ形の島はありません、似ている島でもどこか違う。

そんな、島々を見て、何人もの俳優たちの顔が思い浮かびました。

俳優たちはそれぞれ、とんでもない風を持ってます。風野が言うんだから、間違いないです。

彼らが、人生をかけて吹かせる風を、テレビだったり、映画だったり、舞台だったりで感じて楽しんでいきたいですよね!

物語の風、俳優の風が皆さんの心に吹き込んで、明るく楽しいものになるはずです。

うん!きっと!そう!明日もチャンネルを回せば、劇場に行けば、そこには、たくさんの風が吹いています!

風野もエネルギーチャージしました!ココカラ、マタ、ガンバリマス!

それでは、また、風の吹く日に。

『風をあつめて、巻き起こす』は、次回11/ 5(金)更新予定です。お楽しみに!!