防大へ入ってよかったですか?
防大での経験は、確実に成長をもたらす。それは在学中、自分の存在に苦しんだ者にも当てはまる。
- 在学中は自衛官としての自分を肯定できなかった。だけど在学中も今も防大出身、防大生である自分に誇りも持っている。いつも前向きでいよう、建設的でいようとする心の強さを得られたことは、一生の財産
- 卒業してすぐの頃は、自分に自信を持てず、成長よりはむしろ後退しているような感覚を覚えたが、苦しんだ経験自体が今の自分を強くしている
そして、取材した者に「防大へ入ってよかったか」と聞いてみた。すると「入らなければよかった」と後悔する者は1人もいなかった。
ただし「入ってよかったのかどうかわからない。今もずっと考えている」「防大を好きかと言われるとわからない」「後悔はしていないが、大切な同期、後輩と出会えたこと以外はよかったとは思っていない」などと述べる者は少なからずいた。
「今の自分を否定したくないから、過去を後悔したくない」という意思や、防大を途中退校した者からは「防大に入校したことは後悔してない。けれど、もっと慎重に考えなかった自分には後悔してるかな」という思いを持つ者もいた。
私自身も、後悔はしていないし感謝しているが、もう一度18歳の自分に戻ったときには、同じ道を歩まないかもしれない、とも思う。
それでも、防大の経験を良しとする意見が圧倒的に多かった。
- 出会った人たちが素晴らしい人ばかり。会えてよかった
- 普通では体験できないことを経験できた。世界が広がった
- 辞めたあとは、1年くらいは後悔していたけれど、ほかでは得られない経験をし、汗と涙にまみれて頑張ってきた自分が今では愛おしくなった
防大は自信の喪失と構築が共に起き得る環境だ。受けた心の傷、自信の喪失は絶対に完治するとは言い切れない。だが、時と共に薄れ、時に強さの糧にもなる。たとえ、在校中つらいことばかりで自信を失ったとしても、変わらずひたむきに生きていれば、その苦しんだ思いを昇華させることができることも、取材を通じて伝わってきた。
※本記事は、松田小牧:著『防大女子 -究極の男性組織に飛び込んだ女性たち-』(ワニ・プラス:刊)より一部を抜粋編集したものです。