大事な友人を失った。愛する彼女も失った。絶望に暮れる福田健悟は精神が崩壊してしまう。精神安定剤が手放せないなか、自らの意志でギャングイーグルのリーダーに立候補した。かくしてトップに立った福田だが、とんでもない事態が待ち構えていた。

心を病んでしまい精神安定剤を服用する毎日

3代目ギャングイーグルは引退の時期を迎えていた。精神的な支えになってくれていた先輩たちを失って、徐々にコンディションは崩れていった。友達と会うことも億劫になって、家族にさえも心を閉ざすようになった。

何気なくテレビの電源を点けた。お笑い番組を見れば、少しは元気を取り戻せるかもしれない。中学生の頃から見ていたDVDをレコーダーの中に入れたが、いつ見ても笑えるはずの映像が流れても全く笑えない。あんなに面白かったのに何も感じなかった。認めたくはないが、異常をきたしている。

「おかしくなったかもしれない。助けてほしい」

精神病院に通っていた知り合いに相談して、案内してもらった。この人は自分が通院していたわけではないが、自分の子どものために病院に行って理解を深めていた。車で病院まで送ってもらっているときに言われた。

「福田さんは優しすぎるんだと思います。優しすぎたり、真面目すぎると、いろいろと考えてしまうので」

違う。僕は優しくなんてない。ギャングイーグルでは悪行の限りを尽くしている。優しさとは縁遠い人生だ。病院に着いて診察をしてもらったら、結果は思わしくなかった。この日から精神安定剤を飲むようになった。

信じていた人に裏切られたことで、何を信じればいいのかわからなくなっていた。こうなるくらいなら、最初から誰のことも信用しなければいい。信じなければ、裏切られることもない。唯一、3代目の先輩たちとは少しだけ連絡をとっていた。とはいえ、引退をしてからは会うタイミングが少なくなっていた。

この頃、3代目のリーダーは彫り師になっていた。

「なぁ、福田。タトゥー入れねーか? 普通1時間1万だけど、お前なら7000円にしてやるぞ」

自暴自棄になっていた僕は、安いからという軽い気持ちで一生モノのタトゥーを体に彫った。先のことなんか考えていなかった。1日目は1時間で終了。入浴時はラップを巻くように言われた。少し血がにじんでいる。続きを入れるのが嫌だった。とてつもない痛みに襲われるからだ。我慢をして2回目も通ったが、3回目は行かなかった。

3代目が引退してから1年。この1年は特に目立ったことをしていない。というより、基本的には人と接することを避けていた。集会には行っていたが、チームのみんなとは距離を置いていた。4代目の引退が決まってからだ、自分の闇を世間にぶつけるようになったのは。

ついに僕たちの時代がきた。今まで築き上げられてきたチームの権威を落とすわけにはいかない。それ以上に、地元で一番の座を譲るわけにはいかない。ある種の使命感に駆られて、初代リーダーの龍さんと河本さんに直談判をしに行った。

「次の頭は僕にやらせてください」

「おぉ、気合い入ってるな。よし、気に入った」

こうして僕は、5代目ギャングイーグルのリーダーになったのだ。