文化放送の午後ワイド番組『大竹まこと ゴールデンラジオ!』(平日午後1時00分~3時30分放送)。2011年3月11日に起こった東日本大震災の瞬間、大竹は文化放送のスタジオにいた。震災を通して感じたラジオとの向き合い方、そしてラジオを続けていくということについて話を聞いた。

被災した方に会って話を聞いたとき言葉が出なかった

――2011年の東日本大震災が起こったとき、ゴールデンラジオを聞いていたんですけど、あのときは室井佑月さんがパートナーで、ゲストがイッセー尾形さんでしたよね。

 

大竹まこと(以下、大竹) うん、そうだね。これはただごとじゃないって、すぐ思ったね。それで番組がすぐに特別番組に切り替わったんだよね。

――あのとき、被災地でもラジオが重要なツールとして使われてましたよね。震災のあとのゴールデンラジオは、きちんと事実は伝えるし、納得のいかないことはきちんと怒るけど、大竹さんが務めて明るく振る舞っていたように感じました。

大竹 当時は、ゴールデンラジオでも、タックルでも、被災地に行ったりしたんだけど。まあ、芸人はみんな悩んだよね、何やりゃいいんだろう、何ができるんだろう、って。

――ともすれば不謹慎だ、と言われかねない風潮でしたもんね。

大竹 リアルタイムでいろいろな情報が入ってくるなかで、“笑わせるのか、どうなんだ”ってかなり自問自答したけど、でも笑わせるしかないよね、ほかの寄り添い方を知らないから。だから、その頃は乾きめの放送をしていた気がするね。一緒になって泣くとか、励まそうとかはおこがましい。こっちが泣いてる場合じゃないよなって思ってたね。国の対応の不備とかはしっかり指摘する、それはラジオDJとしてやるべきことだと感じていたけど。

それからしばらく経ってね。16年間、本を書けなかったいとうせいこうが『想像ラジオ』って小説を出してね、これ読んで俺は“やられたな”って思ったね。俺、ラジオのディスクジョッキーやってるけど、こいつは本にそれを書きやがった。16年間本を書けなかったヤツが、木の上に引っかかってる状態のラジオDJがリスナーのリクエストに応える、っていう物語を、震災を契機に書いている。“あ、そっか、俺たちが震災に向き合うっていうのは、こういうことか”って思ったね。泣いちゃったよ。

――そうですね。あの作品も泣かせにかかっているわけではない、まさに乾いているけど、感動する作品だな、と思いました。ところで、僕が学生時代に聞いていた頃より、radikoなどのアプリにより、ラジオという文化はポピュラーになった気がします。ラジオでの発言が切り取られてネットニュースになったりしますよね。そういう点については、どうお考えですか?

大竹 ありがたいなって側面は確かにあるんだけど。なんで、俺なんかがどう言った、こう言ったってことを記事にするんだよ、っていうのはあるよね。こっちは静かにやっているんだから、ラジオはラジオでほっといてくれよって、そう思ってるのは確かだね。

――大竹さんがこう言った、というのがPVも稼ぎやすいし、記事にしやすいのはよくわかります。

大竹 俺なんか、間違ったこともたくさん言っていると思うしね。例えばテレビだったら、発言が記事になる、2次使用、3次使用みたいになっていくのは想像つくんだよ。でも、ラジオだからなあ……(笑)。

今でも忘れないんだけど、タックルで、震災後に被災地へ行って話を聞く、という企画があったのね。そこであるお年寄りの方に話を聞いているときに、“この方、どこかで見たことあるな……あ、お孫さん2人、津波で流されてしまった方だ”って途中で気づいてね。その後、何も言葉が出てこなかったな。あのときに、ラジオだったらもっと近づいて、ちょっと意識的にクールな自分でいれたのかもしれないなって、あとで少し思ったんだけどね。テレビだと何もできないな、と思ったかな。

――ゴールデンラジオは「ゴールデンヒストリー」というコーナーで、介護をされている方のお話だったりとか、最近で言うと発達障害を抱えるお子さんを持つお母さんのお話とかを、大竹さんが朗読されるコーナーがあります。月並みな言い方になってしまいますが、大竹さんは市井の人々にすごく真摯に向き合って、それでいて語り口は淡々としていますよね。オープニングにバカバカしい話をしたかと思うと、ニュースでは真面目に語る、そのバランスが毎日聞き続けられる理由だなと思っています。

大竹 うん。もちろん、頭は切り替えるんだけど、例えば最近のウクライナの話とかになると、御為ごかしみたいなことは絶対に言えないな、って思うよね。現実をしっかりと伝えないといけない、そうなると必然的に自分が現実に向き合うことになるから、「じゃあ日本はどうすんのよ? このままじゃダメじゃん!」って。今日も“どうすんの?”ってだけで時間が来て終わっちゃったから、反省してたんだけどね(笑)。

――この前、ロシアのウクライナ軍事侵攻で40万人の方が犠牲になった、というニュースで、「これは日本にいるとイメージしにくいかもしれないけど、長崎市の人口と同じだけの人が犠牲になってるんだよ? 日本は国として何か意見を表明するべきなんじゃないの?」と仰ってて、まさにそうだなと思いました。

大竹 うん、適当に優しいことも言えないしね。政治も簡単には変えられないしね。でも、「これ、どうすんだよ!」ってことは、ずっと言っていきたいなと思うね。