相手は嘘をついていた。しかも、僕たちを大人数で待ち伏せしていた――たった3人で20人と雌雄を決することになった三浦、高崎、そして福田健悟。その死闘の先に待ち構えていたものとは? 彼の運命を大きく歪み始める。

日本刀で斬りつけられ病院直行の大出血

「なんだ、これは! 話が違うじゃねーか」

車を飛び出して叫んだが、誰も反応しない。頭に血がのぼった。コッチは話し合いをするために呼び出したのに、相手はやる気だ。発足したばかりの新参者チームが、県下最大のチームを相手にすることじゃない。

「おい、聞いてんのか? テメー! こら」

目の前の相手に照準を絞った。相手の金属バットを掴んで、力いっぱい手前に引いた。だが、バットはバンダナで手にくくりけられていて離れない。相手は大声を出して、掴まれているバットを引き離そうとする。僕は左手で離さないように全力でバットを握りしめて、右手で相手の顔を殴った。

高崎と三浦も数秒後に車を降りて、他の数十人と殴り合いを始めた。あとから聞いてわかったことだが、2人は車の中で先輩に電話をしていたらしい。

とにかく今は、早く目の前の相手を倒さなければならない。三浦と高崎が気になる。格下相手とはいえ、2人で10人以上を片付けるのは荷が重いはず。イチかバチか、掴んでいたバットを手前に引き寄せて、相手に耳打ちをした。

「お前、これ以上ヤル気あんのか?」

「……」

「ないならやめとけ。な? わかったか?」

小さく頷くのを確認して、高崎たちの援護をするために後ろを振り返った。さすがに劣勢かと思いきや、高崎は駅の駐輪場にある自転車を投げ飛ばして奮闘していた。

そこに先輩が2人到着。1人は4代目リーダー。もう1人は喧嘩マシーンのような先輩だ。2人のおかげで相手はひるんだ。よし、いける。このまま押していけば勝てる。その時だった。

「止まれ!」

前任のリーダーが叫んだ。誰かが倒れている。何が起きたんだ? 高崎も呆然としている。相手リーダーが持っていた模造刀からは血が垂れていた。倒れていたのは三浦だった。三浦は耳の後ろから大量の血を流して倒れていた。

「1回やめるぞ! お前らも人殺しにはなりたくねーだろ!」

先輩の剣幕に押されて、相手は立ち尽くしていた。急いで三浦を車に乗せて、僕たちは病院に向かった。頼む。間に合ってくれ。タケルのことが頭をよぎる。もし帰らぬ人になってしまったら自分のせいだ。三浦は救急で診てもらうことになり、僕たちは結果を待った。

あとで連絡するという約束で、付き添いには先輩たちが残って、僕と高崎は駅に戻ることにした。車を走らせること数十分。病院にいる先輩からメールが届いた。

『三浦が言語障害になるかもしれない』

こんなはずじゃなかった。もっと楽に勝てるはずだった。僕が油断をしたせいだ。最初から用意周到に準備をしておけばよかった。相手が正直に非を認めて謝れば、許そうと思っていたのに。その温情に対する報いがこれか? 許さない。絶対に捕まえてやる。

そんな意気込みも虚しく、現場には誰1人として残っていなかった。閑散とした状態。そこに、1人また1人と仲間たちが現れた。病院に残っている先輩が連絡をしてくれたのだ。龍さんや安田さんまでいる。それどころか、地元中のチームから力を貸してくれる人たちが集まった。ヘルズファミリー、クラップス、阿修羅、我威邪(ガイヤ)。現場にいた当人として詳細を話した。