広井王子氏が総合演出をつとめる少女歌劇団ミモザーヌが2022年1月9日、東京・草月ホールで冬公演を開催。この日をもって、メンバーのきくたまことが卒団した。大きな感動を呼んだ、この日の公演をレポートする。

▲ミモザーヌきくたまこと卒業公演

短期間で成長を見せるメンバーたち

少女歌劇団ミモザーヌの冬公演『Winter Story~きくたまこと卒団公演~』。今回は定期公演というだけでなく、1期生の最年長メンバーとしてグループを牽引してきた、きくたまことの卒業公演でもあるという特別な機会だ。

「ミモザーヌに在籍できるのは20歳まで」という規則により、昨年20歳になったきくたはミモザーヌ設立以来、初の卒団者となる。つまり今日という日は、きくたがミモザーヌで培ってきた成果を披露する場でもあり、それと同時に彼女が抜けたミモザーヌが、これからどんなグループになっていくのかを気色取るうえでも重要な公演というわけだ。

▲初の卒団者となったきくたまこと

会場となった『草月ホール』のステージは、前回の『なかのZEROホール』よりも低い位置にあり、客席と近いだけに空間全体が親密な雰囲気。お客さんの期待も肌で伝わってくるようだ。

オープニング・ナンバーは、いまもりまなか、たかはしまお、ともだりのあのトリオによる「Welcome sing, sing」~「ストレンジャー(冬版)」。赤いミニドレスに身を包んだ3人が、これから始まるショウを景気づけてくれるのだが、とりわけ、ともだりのあが大人っぽくなったのに驚いた。背も少し伸びたんじゃないだろうか。

成長期真っ只中のメンバーが多いだけに、半年見ないと印象がガラリと変わる。「男子、三日会わざれば、刮目して見よ」という言葉があるけれど、それって男子だけの話じゃないよなぁと、短期間での成長ぶりを見て実感した。

続く「赤鼻のトナカイ」では、いわなみゆうか、やましたあまね、いでいゆきがトナカイの衣装で登場。その後、卒団するきくたまことが現われ、ソロ「冬物語1」で伸びやかな歌声を響かせる。曲中には「冬物語」の主人公であるカップルに扮した、いわむらゆきねとすずきみあいムェンドワによるショート劇も。

とりわけ、「冬の朝に」を歌ったいわむらゆきねは、絶叫混じりの迫力ある歌唱を披露し、芸達者ぶりを印象づけた。なぜか彼女には演歌チックな雰囲気も似合う。

「ベイビーキャッツ」では、たかはしまお、みやはらにこ、たかやあんな、たなかあかり、ともだりのあが猫に扮し、しなやかですばしっこく、気まぐれな猫の動きを表現「猫の世界」に引き込まれた。

「たのしむ」に特化した公演

今回の冬公演で特徴的だったのは「トナカイ(赤鼻のトナカイ)」に始まり「シマウマ(夕陽に笑うシマウマ)」、一昨年の冬公演で披露した「猫(ベイビーキャッツ)」、昨年の夏公演で披露した「フラミンゴ(情熱フラミンゴ)」「ラッコ(ラッコ・サンバ)」と、動物ネタが多かったこと。

さらに幕間の「とらとら」では、いわなみゆうかが張り子の「虎」にまたがって登場したりもして、全体のおよそ1/3の演目が動物関係のものだった。動物に扮したメンバーが続々と登場したことで、ショウ全体のファンタジー色が強まり、独特の世界が紡がれる。

▲「虎」にまたがって登場したいわなみゆうか

カワイイ、カッコいい、セクシー、清々しい……いろんな要素を一つのショウに詰め込んでいた夏公演に比べると、今回の冬公演はどうやら「ストーリー性」に特化した印象。

ミモザーヌのショウは公演ごとにテーマも打ち出し方も変わるため、今度はどんなテーマなのか、そしてどんな面を見せてくれるのかと気になる。それが一つのグループの定期公演を追う楽しみでもあるのだ。

瞬く間に過ぎた第一部『Winter Story』のエンディング曲は「冬物語3」。ここはもちろん、ストーリーテラーとして随所に登場した、きくたまことが締める。雪が舞うステージで、卒団への万感の想いを胸に、彼女の門出のために作られた曲を伸び伸びと歌うきくた。歌い終わったときに見せた満ち足りた笑顔に、胸がきゅんとなった。