タイトルマッチに前向きになれない

――劇的なKO勝利、おめでとうございます。昨日の試合後、「今まででいちばん理想的な闘い方ができた」というコメントをされてましたが?

 そうですね。ここ最近だと、序盤で一発当てて倒すみたいな試合が多かったんで、「ジロリアン陸、パンチ力はあるだろうけど、技術面ではどうなの?」っていう見方もあったと思うんですよ。そこを、今回は強敵の粕谷選手に対して、ちょっと危ない場面もありましたけど、1から3ラウンドあたりはジャブもボンボン当てれたし、強打だけじゃなくて技術的なところでも、「ああ、ボクシングもちゃんとできるんだな」っていうところが見せられたので。そこが大きかったかなと。

▲勝利後、雄叫びを上げた    写真:kaneshin

――今回の勝利で日本タイトル挑戦権獲得ですね。

 まあ、そうですね。いちおう指名挑戦者なんで、日本タイトルのチャンピオンに挑戦できる権利は得るんですけど、マイクでも言ったように、やっぱり自分は試合に対して恐怖心とか緊張がすごいんで。あとは減量でもう気持ちの落ち込みとかもすごいですし。なので、そういうところも考えると、精神的にちょっともつかな? っていうところで、あんまり前向きではないというか(苦笑)。

そんなこと言ったら、応援してくれてる人にはちょっと申し訳ないというか、そんなチャンスないし、ボクサーとしたら、なんのためにやってんだって話になるかもしれないですけど。ただ、自分の正直な気持ちとしては、あんまり……そうですね、前向きじゃないというか。

――今回、相当減量が大変だったようですが。

 はい。前回も相当キツかったですけど、今回もホントにキツくて…。そのうえ、ずっと家とジムの往復で遊びも……まあ、コロナとかかかったら試合なくなっちゃうんで、遊びもせず、ご飯もちゃんと好きなもの食べれず、何も面白いことのない日常が……(苦笑)。

毎日苦しい練習ばっかりで、もう気持ちが滅入っちゃって誰とも会いたくないし、いろんなことに追い詰められて、なかなか苦しい減量でしたね。今年始まったときに「今年は3試合くらいやりたい」って言ったんですけど、やっぱこれ無理だなっていう(笑)。

〇唾液ゼロ!2日で5kg減。限界突破のボクサー減量、地獄の水抜きに密着。

――無理っていう結論になっちゃったんですか、そこは?

 ホントにもう、トレーナーとか会長にも「ボクシング辞めたいです。今回が最後のつもりでやります」って伝えてはいたんですよ。会長としても、次がタイトルマッチだとしたら、当然やりたいだろうとは思うんですけど、やるとしたら数カ月後って話だったんですよ。そうなると、僕も試合が終わったばかりで、またすぐに減量と言われても、なかなか気持ちをつくれないというか。勝ったのはすごくうれしいんですけど、また次の試合のことを考えなきゃいけないっていうのが、なかなかツラいところではあるんですけど。