「立って食う&飲む」の魅力

「立って食うなんて忙しない」「ゆっくり食わせてよ」という方も多いとは思いますが、立って飲食することにはね、たくさんのメリットがあるんです。それを説明させてください。というわけで、まずは30秒ください。

人間は座りたい生き物です。

座るのは確かに楽です。電車の席取り合戦を見ると、ああそこまでして座りたいんだなって思いますよね。私はその様子をじっと眺めるのが好きです。一番最初にダッシュして、ドア横の席に座らない人を見ると、「お、プロだな」って感心したり。

一般的に地位が高い人ほど座っていることが多いため、立つということは、座ることに比べて、地位が低いのは間違い無いでしょう。だから、「立って食う」という行為を頑なに避けている人もいます。そういう店には男性が多いこともあって、女性は特に入りづらいかもしれません。

だけど、立ち食い&立ち飲みをお勧めしたい理由があるんです。

たとえば、すぐ帰りたくなる。

立ち飲み屋を例に出すならば、家で奥さんが待っていて、それでも一杯飲みたい(そんな時があるんです男には)。でも長っ尻できない。だけど飲みたい。そんな無限ループの葛藤の末、脳みそが熱を持って発火しそうになったときは、立ち飲み屋にひょいと入って一杯煽って帰るのがよいと思うんです。

あとは、安い。

座席を設けないということは、それだけ客が入るということ。さらに回転が早い。つまり、うまいもんを安く食えるということ。

とりあえず、立ち食いを愛する私が、いろんな店を回る連載がスタートします。みなさんに立ち食いの名店をお勧めしながら、お店と立ち食いの魅力を紹介していこうと思います。よかったらお付き合いください。

客が自らタレにドボン!

『鳥勇(とりゆう)』は武蔵小山では知らない人はいない有名店です。日本を代表する長い商店街『パルム』の端っこにあるのが本店で、商店街の途中をひょいと横に入ったところにあるのが、今回お邪魔する駅前店です。

 

鳥勇が有名な理由、それは街全体に幸福の香りを届けていること。タワーマンションが建つ前、駅前に店舗があった頃は、電車の改札を出るとすぐに焼き鳥の香ばしい匂いが鼻をくすぐったもんです。

鳥勇にふらふらと誘われてしまった地元住民も多いと思います。入ってみましょう。焼いた串がこんな風に並んでいます。壮観。これらは持ち帰りのためにおいてあるようです。

目の前では店員さんがどんどん焼き上げていきます。休む暇なく焼いていますが、皿に積み上げるとどんどんと売れていきます。夕暮れ時に「5本」「10本」と注文していくのは近所に住むお母さんでしょうか。子供の夕ご飯と、お父さんの晩酌、あるいは自分でこっそり食べるのかな。なんて想像が膨らんじゃいます。

店内でもいただけます。ここで食べていく旨を店員さんに伝えて、正面右のカウンタースペースに立てばオッケー。目の前に取り皿が置かれますので、前の台の上に並んだ焼き鳥を選んで、皿の上に載せるセルフスタイルです。ちなみに台にはヒーター機能が付いていますので、焼き鳥はほどよくあたたかいままです。