のりお「漫才というのはね、生き物です」
――しかし、今はコンプライアンス遵守の世の中になっていますから、お笑いも時代の流れとともに変化している印象があります。
よしお 昔の人のほうがキャラクターはハッキリしてましたよね。
のりお そう、僕らは(80年代の爆売れしてるときも)女の子にキャーキャーは言われなかった。ザ・ぼんちとか、B&Bとかは言われてましたけども、そのときも、僕はヒールに見られたかったんです。「のりおはなんちゅうやっちゃ」と思われてても「そやけど、俺は最後まで残ったるぞ!」という気持ちでやってましたから。マラソンで言うたらね、トップ集団の3着か4着にずっとおる奴。やらしいやっちゃ、こいつまだへばりついとるわ(笑)と言われる。そういう奴になりたいんですわ。
漫才というのはね、生き物です。1週間17公演あったらね、全部はウケない。全部ウケたという奴がいたら、それはウソです。ダメな日でもプロですからそれなりに取り繕ってやりますけど、自分でも「今日はまあまあだな、ヒット売ったな」と思う確率は3割から4割。下手したら2割5分ですね。自分らの調子によっても変わるし、客層によっても変わるし。
――その大当たりの2割のために立ち続ける、ということですね。
のりお ですね。出てきて毎回ウケる漫才なんか僕、ないと思いますよ。ある程度のキャリアの者になったらね、周りの人間も「あなたたちウケてませんでしたね」とは言わないですけど。
よしお 言わないよね、そんなの(笑)。
のりお 本人がわかってるだけです。
――それを勘違いしないところがプロですね。
のりお それはわかっとかんと。ウケたウケないを気にしない芸人はいないですからね。自分の舞台が15分あるとして、その間、頭は常に動いてるわけです。「1回も笑ってない人がおる。ここらで笑わしたいな」と思ったらスピード変えたりします。やめたらそんなこと考えずに済むわけですからね。でも、敢えてそれをやり続けるのは、この現代社会で自分が過去の人間じゃなしにね、今、この瞬間をみんなと一緒に生きてるということを示すために僕はやりたいんです。「俺、昔こんなことやっとったんやで」と言う自分にはなりたくないんです。
よしお そう、それは寂しいよね。
のりお 朝通勤してるサラリーマン、学校行ってる人、それと同じように、俺もみんなと同じ気持ちで今日も動いてるで、と。
――師匠、師匠って持ち上げられるよりは、みんなと同じ目線でいたいということですね。
のりお そうです。おだてられると言うのは、こちらを立ててくれてるわけですから、ありがたいことですけど。ただ、それを鵜呑みにするのかしないのかは自分次第です。
よしお そうやそうや。
のりお 人が自分をおだててくれるということがわかる人間でいたいですね。
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