お笑い好きからすると吉本は最高の環境

――吉本という熾烈な環境のなかで、お二人はどのように育まれたと思いますか?

井上 なんか毎日誰かに負けてますよね、僕の感覚では。昨日も、さんまさんや今田(耕司)さんはもちろんですけど、舞台が終わって次長課長の河本(準一)さんにご飯連れてっていただいてしゃべったら、感覚も考え方も河本さんに負けてるな、と。吉本にいると、それが毎日続いている感じです。誰かと一緒にいたら必ず負けてるなって、自分の実力のなさを痛感する日々ですね。

――そんな毎日は少ししんどいですか?

井上 しんどいけど、そこから逃げてたら成長せえへんし。でも、しんどいなかにもちろん楽しさもあるから! 上の方に認めてもらえたときの喜びもあるし、ほかの事務所と一番違うところはそこかなと思います。劇場出番も、自分らがその日一番笑いを取ろうとしても、「うわ、新喜劇に勝たれへんかったな」とか、「師匠方に勝たれへんかったな」とかっていう……なんか毎日敗戦、破れて次の日を迎えるっていう感覚ですね、僕は。

――逆に言えば、それがモチベーションになっているっていうことですね。石田さんはいかがですか?

石田 僕はお笑いが好きですから、あらゆる手法を学べるのが吉本にいて良かったなと思うことですね。やっぱり映像で見るより生で感じるほうがすごくわかるので。今、僕はNSCで講師をしているので、他の芸人さんに取材みたいなこともできるようになってきたんです。「これはどういう感じで作っているんですか?」みたいなことをチャンピオンとかに聞けるようになってきたんですよね。

――そういう分析にも連なりますけど、NON STYLEは「女子高生が好きな芸人」ランキング、ずっと1位じゃないですか。それをお二人はどう捉えていらっしゃるでしょうか。

井上 いや、僕はまったくなんでかわかんないです。

石田 難しくないからですよ。言葉自体も難しいものを使わないようにしていますし、設定も難しくないんですね。世間一般がある程度わかるようなことしか題材にしていないんで。クイズなんかでもそうなんですけど、ギリギリわかるかわからへんかのラインがやっぱり一番面白くて、一番みんな興味を持ってくれる。だから、高校生は卒業して大人になったらNON STYLE離れしていくだろうし。常々「マクドナルド」みたいな万人向けのものになりたいと僕は思っているんですけど。あとはYouTubeに上がってる動画の本数が格段に多いということ。それが理由ですかね。

――でも、純粋にうれしいっていう気持ちは、もちろんおありなわけですよね。

石田 そうですね。だから僕は、自分の娘が高校生になるまでそれを維持できたら最高やなと。やったら反抗期なくいける気がするんです(笑)。

――売れてる中堅の芸人さんが一番目標設定するのが難しいと思うんですが、今のお二人は何がモチベーションになっていますか。

井上 僕は「まだやってないことをする!」ですね。ゴールデンの番組司会とかはしてないので。あとは全然ジャンル違うんですけどドラマの主演とか。僕と同じくらいの歳の時に、さんまさんはやっていたけど俺はまだやってない。そういうふうに、「他の芸人さんで売れてらっしゃる方がやったけど、俺はできてないことをやる!」というのが一番のモチベーションですかね。

石田 僕は100年後、200年後にお笑い史を振り返るみたいな番組をやったときに「NON STYLEといえばこういうネタ」というものを作ることです。若い頃のネタと同時に、めちゃくちゃ年取ってからのも使われるようなネタをつくっていきたいです。

――夢路いとし・喜味こいし師匠みたいな感じですよね。

石田 はい。師匠みたいになりたいなと思っているんで。だからそれに関して言うと、僕たちからモチベーションが消えることはないんですよね。

▲NONSTYLEのモチベーションが潰えることはない

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