モノマネ世界チャンピオンとの出会い
ある日のこと、店長と飲みに行ったときに、これまでひた隠してきた自分の夢を語った。ショーパブのスタッフとして成功したいわけではないこと、これまでも芸能活動をしてきて、最終的にはタレントとしてステージに上がりたいことを伝えた。
周りのスタッフにも、それまで少しずつ話していて、舞台に上がって芸能界で売れたいと伝えると「そのほうがいい」とみんな言ってくれた。俺はスタッフの中で一番のムードメーカーだったからだ。
店長はすぐに動いてくれた。エルヴィスの衣装や音源など、どうやったら手に入るのか調べてくれた。日本人でエルヴィス・プレスリーのモノマネで世界チャンピオンになった「森泰正(もりやすまさ)」さんという人の存在を教えてくれて、その人と会って話を聞くことができた。
当時の店長は本当によくしてくれ、感謝しかない。店長は教員をやっていたのに、それを辞めてモノマネのショーパブで働くほどの情熱の持ち主だった。だから、モノマネタレントになりたいんだと言ってる俺を、ものすごく応援したくなってくれたようだ。
エルヴィスのモノマネのチャンピオン森さんは、月に一度、六本木のライブハウスで『ELVIS NIGHT』というイベントをやっていて、「そんなにエルヴィスが好きなら、歌いにおいでよ」と声をかけてくれた。森さんの好意に甘えて、ショーパブのステージに立つまで、エルヴィスのモノマネで生バンドで歌わせてもらうことになった。
初めてのステージで俺は手応えを感じた。エルヴィス好きが集まるオールディーズライブで、俺は爆笑をとったからだ。
なんでそんなにウケたのか。
ネタバラシをすると、キサラで見てきた芸人さんがやっていたMCのトークや演出を、見よう見まねでそのままステージでやったからだ。プロが磨いてきた技を拝借すれば、それはウケる。さらに、エルヴィスファンが集まるライブなのだから、ハードルも下がっていた。
だが俺は、そのことに気づかず、自分にはやはり才能があるのだと有頂天になっていた。
(構成:キンマサタカ)