「メジャーデビューをする!」という決意表明

正直な話、あえて混乱していることを隠さずに、ステージで失敗している姿を見せるのも、アイドルの戦略的には「アリ」である。

そんな不安定な状態で頑張っているアイドルたちを、「俺たちが支えよう!」とファンが思うことで、大きな一体感が生まれることもあるし、そういった部分で観客におもいっきり甘えていいのが、アイドルの特権でもある。

だが、4人は「甘え」を拒絶した。

甘えることで、少なからずファンを不安にさせてしまう。

それだけはどうしても避けたかった。

新しい衣装で登場し、いきなり「未来」を見せたかと思えば、3B junior時代の楽曲を立て続けに披露して「歴史」を継承していく意志もハッキリと見せた。だからこそ、そこに不安につながる要素は不要だった。4人が力強く、一歩目を踏み出す姿だけをファンの目に焼きつけたかった。

惜しくも超満員とはならなかったが、アメフラっシの単独ライブとしては過去最高の観客が集まった。ここで立ち止まるわけにはいかない。しっかりと決意表明をして、2020年に向けて驀進(ばくしん)するしか選択肢はなかった。

彼女たちの決意表明、それは「メジャーデビューをする」。

それこそ前身の3B junior時代からの悲願である。この日、過去の楽曲を披露したのは、かつて一緒に歌って踊ってきた仲間たちの想いも乗せて、メジャーデビューを実現させる、という意思表示でもあった。

どんなにスキルが高くても、メジャーデビューできるわけではない。

もっとたくさんのファンの支持を集め、人気者にならなければ、その夢には届かない。

その想いをステージから言葉で届けていく中で、愛来はキッパリと「もう一歩進んで一歩下がる、は嫌です!」と言った。

文字では伝わりにくいかもしれないが、アイドルがファンに向けて発する言葉としては、かなり強い部類に入るものだった。他のメンバーも似たようなことを話してはいたが、ここまで直接的な表現はしなかったので、このひとことはグサッと刺さったし、いかに腹を括(くく)っているのかがわかった。

1回の公演から、これだけたくさんの「決意」が見えたら、背中を押してあげたくなる。こうして、この連載はスタートすることとなった。