4人が持つスキルが4人体制の初ライブを成功させた

2019年12月15日。

この日、東京・神田明神ホールで開催された単独ライブから、アメフラっシは4人体制での活動をスタートさせた。

あまりアイドルに興味がない方からしたら「アイドルグループってメンバーの卒業や新加入が日常茶飯事じゃないの? だから、そんなに大騒ぎする問題ではないのでは?」となるかもしれないが、実はそんなに単純な話でもないのだ。

たしかにメンバーがひとり抜けて、その穴を埋めるべく、新メンバーが加入するのであれば、そこまでややこしい話ではない。抜けたメンバーが歌っていたパートを、そのまま新メンバーに引き継げばいい。業務の引継ぎは一般の職場でもよくあることだし、最初こそドタバタするけれども、いつのまにかそれが当たり前になっていく。

だが、アメフラっシは新メンバーを補充せず、4人で再出発する道を選んだ。

もともと26人でスタートした前身の3B juniorから“細胞分裂”して誕生したグループだけに、そのメンバー以外から補充するのは、さすがにまだ抵抗がある。結成からまだ1年ちょっとしか経っていないから、いろいろな意味で再スタートは切りやすい。

それでも続けていくメンバーの負担は大きい。

1人抜けた分、誰かが空席になったパートを歌わなくてはいけないし、基本的には5人で最高のバランスになるようにダンスのフォーメーションは組まれているから、それを4人でよりよく映るものに作り直さなくてはいけない。メンバーはみんな、それを覚えなくてはいけないのだ。

「この日から4人体制になった」と書いたが、じつは前日に5人体制によるラストライブが開催されている。

つまり、前日の時点でメンバーの頭の中にはひとつの楽曲に対して「5人バージョン」と「4人バージョン」、ふたつの歌割りとフォーメーションが混在していた。非常に間違えやすいし、誰かひとりが間違えたら、いっぺんにすべてが崩れてしまう。これはかなりの極限状態、である。

ところが4人は目立ったミスもなく、ステージを終えた。

聞いてみると、「4人用のフォーメーションや歌割りのレッスンはしっかりと積んできたが、前日は一旦、頭をからっぽにして5人でのラストライブに臨んだのだ」という。たしかにそれが事故ることを回避する最善策だろうし、それができるのも彼女たちのスキルの高さとキャリアのなせるワザである。

そして5人でのライブを終えたあと、汗も涙も乾かぬうちにライブ会場に併設されていた倉庫にこもり、全員で4人バージョンのパフォーマンスを徹底的に叩きこむべくリハーサルを繰り返したそうだ。

2日間、ある意味、まったく「別のこと」をステージに披露するには、ここまで割り切らなくてはいけなかった。