若手選手のパワフルなスイングは「そう見えるだけ」

2019年の二軍読谷キャンプでは、前年の甲子園を沸かせたドラフト1位の根尾昂(内野手・大阪桐蔭高)が大きな注目を集めました。

そのおかげで、他の選手たちもたくさんの観客の方々から見てもらうことができました。プロ野球選手はファンに見てもらって成長するものですから、とても良かったと思います。

非常に有望な若手が増えて、マスコミやファンの皆さんからの注目度がアップしているのをひしひしと感じます。早く一軍で活躍できるようにという願いも、痛いほど伝わってきます。でも、私は焦らせたくないと思っていました。

それは、重圧をかけないようにとか、甘やかすということではありません。そのほうが、結果として育成の成果が出やすいという意味です。

私たちが高校生だった頃に比べると、最近の選手たちは、体づくりについての知識をはるかに多く持っています。栄養、筋トレ、休養の効果を理解している選手が多くいます。立派に発達した筋肉の持ち主も珍しくありません。

また、多くの若い選手たちは、パワフルで理屈に合ったフォームでバットを振り、ボールを投げています。指導者の知識や、映像分析の技術などが影響しているのだと思います。

ただ、どんなにゴツい体に見えても、どんなに美しいフォームに見えても、どんなにパワフルなスイングに見えても、それはそう見えるだけ。まだ中身は「プロフェッショナル仕様」にはなっていません。

あくまでも不動のレギュラーになることを目指し、体づくりや基礎的な体の使い方を身につけることに十分な時間をかけ、長期的な計画の中で技術練習を積み上げ、数多くの試合を経験する中で相手への対応力を磨いていく。

それによって、揺るぎない実力を築き上げるほうが結果的に大きく成長できますし、長い間、活躍できるようにもなります。「急がば回れ」なのです。