連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』でお姫様グランプリに輝き「あの子は誰!?」と、その透明感あふれる姿が話題になった羽瀬川なぎ。ドラマだけでなく、映画やCM、MVと活躍の場を広げる期待の若手女優だ。そんな彼女が自身3度目となる舞台に挑戦する。盲目の少女という難しい役どころを務める今作で、どのように役と向き合い演じるのか。インタビューを通して、SNSでは見えてこない素顔へと迫る!

ラジオ『子ども科学電話相談』が大好きでした

――今回の出演が決まったときのお気持ちは?

羽瀬川 お話をいただいたときは「やった~~!!」って、マネージャーさんとハイタッチした記憶があります(笑)。稽古が近づくにつれて、少しずつ不安な気持ちもあったのですが、今は皆さんと楽しく稽古しています!

――脚本を読んでみての感想はいかがですか?

羽瀬川 温かいお話だなと思いました。特別大きな事件や出来事が起こるわけではなく、いろんな人のそれぞれの日常が入り組んでいて、それが最終的にきれいに1つにまとまっていく。徐々に心がホカホカしていく感じでしたね。読むのに少し時間がかかってしまったのですが、すごく楽しく読めて稽古するのが楽しみになりました。

――羽瀬川さんが演じる高校生の“鈴(りん)”は、目の見えない女の子。鈴ちゃんについて、どういう人物か教えていただけますか。

羽瀬川 やはり一番の特徴は「目が見えない」ということだと思うんですが、本人はそれをマイナスとは思っていなくて。周りにもそのことで特別扱いしてほしくないと思っている、本当に普通の女の子。真面目なところは自分と似ているなと思います。自分から先陣を切って笑いを取りに行くタイプではなく、後ろで笑っていたいタイプというところも(笑)。自分と大きく違うのは視覚、目が見えないっていうことくらいで、それ以外は自分の理解できる範疇の普通の女の子なのかなって思います。

――「目が見えない」ことを表現するのは、難しそうですね。

羽瀬川 難しいな、と思いました。役作りのため、『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』(※注釈)に参加したんです。暗い中に放り込まれたときの目の動きっていうのは、一体どうなっているんだろう?っていうのを体感できました。眼球の動きというのは、自分の意志とは反した動きをしてしまうというのを経験できたので、今後演技するうえで突き詰めていきたいなと思っています。

 

――役作りのためにそのようなワークショップにも参加されたんですね。

羽瀬川 今回は役のためでしたが、視覚障害を持つ方の為に、私も何か少しでも役に立つことができたらいいなと思うきっかけになりました。点字ブロックの上に置いてある自転車を見ると、どかさなきゃと思うし、剝がれかけてる信号の前の点字ブロックを見ると、一刻も早く直さなきゃ!って。そういう社会問題にも目が行くようになりました。

――舞台を鑑賞したあと、皆さんにもそういった視点を持っていただけたらうれしいですね。今作はラジオがテーマになっていますが、羽瀬川さんご自身のラジオ体験といえば?

羽瀬川 待ってました、この質問(笑)。実は私、日常生活がラジオの人間で、むしろ今回の作品を読んで「今の人たちにとってラジオはあまり馴染みのないメディアなんだ」って驚いたくらいなんです。子どもの頃からNHKの『子ども科学電話相談』が大好きで! 小学校の頃、夏休み中参加してました! 自分では発想もできないような質問を投げかけている子どもたちがあふれてて、想像力の豊かさに毎回驚かされ、本当にすごい番組だな、と思いながら聴いてました。毎年夏休みが楽しみでした。

――めちゃくちゃヘビーリスナー! 今でもラジオは聞かれますか?

羽瀬川 毎日聞いています。今よく聞いているのは、語学講座。英語、韓国語、中国語の3か国語を聞いていて、テキストを買って母と一緒に勉強したりしています。英語をいちばん頑張りたいと思っていて、母が中国語に興味を持っているので横でテキストを覗きながら一緒に発音してみたり。

 

――それこそご自身でもラジオのパーソナリティをやってみたいと、思いますか?

羽瀬川 はい、思ってます! ラジオはこのお仕事を始めた頃からの目標。なので、今回ラジオに関する舞台に出演できて本当にうれしいです。ラジオで喋るのは憧れですね。そのときのために1人語りを練習しておきます(笑)。

――羽瀬川さんにとって舞台は3年ぶりで3度目の出演となりますが、映像作品とは違う舞台の魅力とは?

羽瀬川 舞台を観るのが大好きな気持ちも、一方で苦手っていう人の気持ちもわかるんです。周りの人との距離感とか、今は一時停止とか倍速しながら見るのに慣れている時代というか。でも……、本当にとりあえず見に行ってみて欲しい! 役者さんが汗をかいている姿や、泣いている姿、その役者さんの涙によって観客の方がすすり泣く声だったり。その場その場でしか生み出せない生の演劇と空間は、ステージに立っている役者さんだけじゃなく、客席に皆さんがいるからこそ、出来上がるものだと思っていて。演じる側も毎回それを楽しみにしているし、むしろ観客としてじゃなく演者になって一緒にやりましょう、とも思います(笑)。

――羽瀬川さんご自身のことについても伺えればと思います。今作もですが、普段から実年齢より若い学生役などが多いですね。それはうれしいのか、どうなんでしょう?

羽瀬川 今回の作品も高校生ですね。年齢は気にしないようにしています(笑)。たしかに、年齢よりも幼く見られるので、まだ学生役を演じられるのはすごくうれしいです。

 

――今作も制服姿があるのか、見る方はお楽しみに(笑)。今後こういった役を演じたいという目標はありますか?

羽瀬川 深刻なバックボーンがある、ミステリアスな役を演じてみたいなと思っています。もともとミステリーが大好きなので、2時間ドラマの“犯人に見えるけど、犯人じゃない役”みたいな、ミスリードする役をやってみたいなって思っています。形としては、ドラマにレギュラーとして出演させていただいたことがないので、それを今第一の目標にしています!

――羽瀬川さんのSNSを拝見していると、けっこう硬派というか。今時珍しい使い方なのかなと思います。

羽瀬川 硬派……なのでしょうか(笑)?

――実際お会いすると、すごく明るくてよく喋る方なんだなと。

羽瀬川 本当ですか!? たしかに、初めてお会いするスタッフの方からは「SNSで見る印象と違うね」って言われます。気になる人、ぜひ舞台見に来てください(笑)!

 

――告知上手! 最後に、作品への意気込みをお願いします。

羽瀬川 3年ぶりの舞台ということで、ほかの共演者の方々に必死に食らいついていこうって思っています。そのなかで、鈴ちゃんは“普通の女の子なんだよ”っていうことを演じられたらなって思っています。物語の中心にいるのは室さん演じる真で、彼が行動することによって登場人物全員の心や気持ちが動かされていく様を見てもらいたいです。何よりお芝居できるのが楽しみですし、早く皆さんにもお会いしたいです!

(※注釈)照度ゼロの暗闇空間で、聴覚や触覚など視覚以外の感覚を使って日常生活のさまざまなシーンを体験するエンターテイメント。


【作品紹介】
『ON AIR~この音をキミに~』
作・演出/宇田 学
原案/田中 渉
出演/室 龍太 新内眞衣 小西成弥 羽瀬川なぎ/螢 雪次朗 ほか


『99.9 刑事専門弁護士』シリーズ、『極主夫道』『探偵が早すぎる』などを手がけた人気脚本家・宇田学の書き下ろしオリジナル作品。とある地方のラジオ局を軸に、混沌とした現代で懸命に生きる人々の姿を映しだす心温まるストーリー。羽瀬川は室龍太演じる主人公・桜木真の妹で、目の見えない少女・鈴役で出演。

<東京公演>新国立劇場 小劇場 2022年7月28日(木)~8月7日(日)
<京都公演>京都劇場 2022年8月13日(土)~8月14日(日)


公式サイト=http://konooto.jp 
プロフィール
羽瀬川 なぎ(はせがわ・なぎ)
'98年6月19日生まれ。東京都出身。身長158m。特技=バレーボール/十露盤/着付け。趣味=スライム/スクイーズ/語学勉強(英語)。舞台、映画、ドラマのほかCMなどでも幅広く活躍。人気アーティスト・WurtSのMV『分かってないよ』に続き、『Talking Box(Dirty Pop Remix)』でもオファーを受け、全く別の表情を見せ存在感を発揮している。連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』でお姫様コンテストのグランプリに輝き「あの娘は誰!?」と、話題になったことは記憶に新しい。舞台は『いまを生きる』(新国立劇場)、『転校生』(紀伊国屋ホール)に続き3作目。今注目の若手女優の1人。SNS=(Twitter:@nagihasegawa、Instagram:@nagihasegawa)