軽食といえばサンドイッチ
こちらの店のアルコールメニューは、瓶ビール・ウイスキー・ジンだけというから、しびれるじゃありませんか。明らかに、私たちより上世代のおっさんをターゲットにしている感がたまらない。
私は、この店のど真ん中の客ということです。ビールが小瓶というのもいい。「茶色の小瓶」というグレンミラーのジャズナンバーがありますが、あれは瓶ビールを歌っていたんでしょうね。
大瓶だと1本飲み切るのが億劫なときもあるし、途中で気が抜けてしまうことだってある。でも小瓶なら大丈夫。そして、気づいたら胃の中に消えている。ああ、これは魔法の小瓶だ。
いわゆる酒のつまみになるものがメニューに見当たらないときは、トーストを頼むといいでしょう。というか、こちらの店のフードメニューはトースト以外ない。ビールとトーストを合わせるのは、最高の組み合わせなのは想像に難くない。
ところで、「軽食」という言葉があるけど、改めてどういう意味かと辞書で引いたら、「軽い食事。サンドイッチなど」と書いてあってびっくりしました。軽食といえばサンドイッチなんです。
酎ハイにあわせるなら刺身や唐揚げ、餃子だけど、ビールの小瓶に合わせるのはサンドイッチしかないということでしょう。この歳になっても新しい発見というのはあるものです。うれしいからビールおかわり。
トーストと一緒に塩がついてきました。熱中症の対策として塩分を補給することが求められますが、「トーストに塩をふりかけて食べると、酒が進む」と一緒にいた仲間が教えてくれましてね。
確かに、あっさりとしたトーストが、一気に自己主張を始めた感じがしました。これはビールが進む。それ以上に血圧が上がりそうだけど、この日の私は、終日の外歩きで大いに塩分と水分が失われていたから、これくらいのやんちゃはいいんです。死ぬよりはいいでしょう。
そう言いながら、ビールと塩をふりかけたトーストを口に運ぶ。もっと歳を重ねて仕事もリタイアしたら、こういう店でのんびりしながら、軽い食事に、ビールの小瓶で早い夕食を終わらせて、自宅に帰って晩酌をするんだろう。そんなふうに人生に思いを馳せる。本を読んだり、ぼんやりしたり。きっと喫茶店とは自分と向き合う時間なんですね。
喫茶店は誰かの人生が通り過ぎる場所です。同時に誰かの大切な居場所でもある。ライフという名の喫茶店で、ちょっとおセンチなことを考えたら、酔いが回ってきた証拠。さて、次の飲み屋に行きましょう。
実は、この連載は今回が最終回なんです。いつかどこかの喫茶店で会えたらいいですね。
『黄昏時に今日も一杯 気まぐれ喫茶メシ』は今回で最終回となります。ご愛読いただき、ありがとうございました!!
■ライフ
住所:東京都中央区月島3-11-6
営業時間:9:00~21:00
電話:03-3531-1659
定休日:隔週日曜
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