相方、娘、そしてこれからの東京ダイナマイト

――ヒリヒリするこの本で、ほっこりするところが、長州力さんや大仁田厚さん、そして相方の松田大輔さんについて書かれているところです。コンビを組んで20年以上経って、二郎さんから見て松田さんが変わってきたところってありますか?

ハチミツ 基本的には、そんなには変わってないかもしれないですね。だから、ポイントポイントで記憶に残っていることを書いてます、2004年のM-1の当日にキセルで捕まったりとか(笑)。ただ、吉本に来て良かったなと思うのは、それまでの松田さんって完全な縦社会の人間で、周りに先輩ばかりだと萎縮する人間だったんです。

それが吉本に入って、ルミネに来たら、横の楽屋からうるさい芸人の声に混じって、松田さんのバカみたいな笑い声がめちゃくちゃ聞こえてくる。オレがいるほうの楽屋には、NON STYLEの石田とか、おとなしいヤツしかいないんですよ。向こうの楽屋は、うるさくてネタ書いてないほうの芸人しかいない(笑)。でも、松田さんは絶対にそういう環境のほうがいい。バックステージのムードが良い場所のほうが、松田さんは映えると思ってます。

――この本もそうですし、Twitterやインスタを見ていると、娘さんとのエピソードに心打たれます。二郎さんはお子さんが生まれて変わったことってありますか?

ハチミツ 芸人として変わったことはないですね。ただ、パパにはなりましたね。これまで散々、夜遊びをしてきたけど、できれば子どもが起きているうちに帰ろうって思うようになりました。まあ、最近は逆に娘が留守番の時間を楽しんだりしてますけど。

――この前の単独でも、あとから映像を見ていたら、おたこぷーさんのところで娘さんの笑い声だけが響いていたって話をツイートされていて、それもホッコリしました。

ハチミツ 最近はコロナなんでできなくなったけど、娘が2~3歳の頃、幕張の劇場によく連れてきてて、ほかの芸人とかが遊んでくれてたんです。今でも娘は、遊んでくれてたインディアンスの田渕とか、ネルソンズのことを応援しています。二郎会でも、サンドウィッチマンの伊達ちゃんとか、タイムマシーン3号の関太(せきふとし)とか、よく遊びに来てたから、芸人のことが好きですね。娘にとっては、今一番忙しいサンドウィッチマンの伊達、という認識よりも、優しい伊達ちゃんのイメージのほうが先だから。

――なるほど。物心ついたときには、お笑い芸人がいるって環境だったんですね。

ハチミツ でもオレ、自分から自分の仕事を芸人だって言ってなくて、あるときに娘が幼稚園から帰ってきたら、オレのこと指さして「ハチミツ二郎」って言うんですよ(笑)。クラスメイトの親がオレのことを子どもに言って、それをその友達から娘が言われたみたいで。近所にも学校にも、直接は「自分が芸人だ」とは言ってないんですけどね。親が芸人で嫌だなって思うのは、まだ先なのかなって思ってます。

――この本を読んでいて、自分が芸人さんのことを好きだから特にそう思うのかもしれないですが、芸人ってイイ人が多いなって思いました。

ハチミツ 勝ち上がった人、残った人はみんな優しいですよ。

――ひとつお聞きしたいと思ってたのが、THE MANZAIの決勝があった次のTBSラジオ「爆笑問題カーボーイ」で、太田さんが東京ダイナマイトさんの落ち着きっぷりがすごい、なんであんなすごい舞台で淡々とネタできるの?っておっしゃってたんですけど、たしかに二郎さんが緊張してるの見たことないなって思ってて、なんで緊張しないんですか?

ハチミツ うーん。でも、松田さんはめちゃくちゃ緊張しますよ(笑)。オレはたしかに、たけしさんも松本さんも、すっごく尊敬しているけど、緊張で話せなくなるってことはないですね。だから平常心でいられるから、あえてそういう人の前で無駄口を叩かないようにしてたんですけど、どこかでちょっと変えたところはありますね。

――というのは?

ハチミツ 大御所でしっかりしてる人って、意外とズカズカ土足で懐に入ってくるヤツのことを可愛がってるなって気づいて(笑)。

――あはははは(笑)! この本にも、二郎さんのあることないことを吹聴していた先輩が出てきますよね。“遺書”って気持ちで書いてるっていうくらい全てを込めたこの本を読んだら、二郎さんが本当に生きていてくれてよかった、と思うし、そんなに軽々しく「次の目標は?」って聞きにくいんですが、でもあえて、東京ダイナマイトのハチミツ二郎として、今後の野望をお聞きしたいなと思いました。

ハチミツ 吉本にいたらなかなか難しい、高いハードルみたいなんですが、たけしさんを産んだ浅草の劇場で、いつかは看板を立てたいな、とは思ってます。NGKでもトリを取って、浅草の劇場でもトリを取れる、そんな芸人になりたいなと思いますね。

――東京ダイナマイトの漫才師としての矜持を伺えて、本当に感無量です。と同時に、長州さんが新日本を出てったり、また戻ったりしてたから、自分も事務所間の移動とかもっと簡単にできると思ってた、というプロレス感覚で見ているのも可愛らしいなと思ってました。

ハチミツ それ、けっこう本気で思ってるんですよね。プロ野球だってFA宣言があるじゃないですか。例えば後輩とか見てても、太田プロに行って有吉さんに引き出してもらったほうが活きるだろうな、って芸人もいるし。プロレスからいろいろなことを学んだんです。


 
<イベント情報>
『マイ・ウェイ ー東京ダイナマイト ハチミツ二郎自伝ー 』刊行記念トーク&サイン会開催!
日時:2022年8月13日(土) 12:45開場 / 13:00開始
場所:芳林堂書店高田馬場店 8Fイベントホール
『マイ・ウェイ ー東京ダイナマイト ハチミツ二郎自伝ー 』(双葉社)をお買い上げいただきました方に参加券をお渡しいたします。
お電話・メールにてご予約の際は、当日開催時間までに3Fレジカウンターにてお支払い・書籍と参加券の受け取りをお願いします。
詳細は芳林堂高田馬場店ホームページでご確認ください。
【電話・メール受付】
TEL:03-3208-0241(代表)
e-mail:baba@horindo.co.jp
プロフィール
 
ハチミツ二郎(はちみつじろう)〈東京ダイナマイト〉
岡山県倉敷市出身。吉本興業所属。冷めたツッコミが特徴。長いこと金髪をトレードマークとしていたが、2010年半ばから黒のモヒカンにし、舞台では相方の松田に「ちょい悪キューピー」といじられるようになった。その後2011年から坊主頭、2012年からは髪を伸ばして再び金髪に戻し、2018年からは坊主頭に髭という風貌に変化した。身長177cm、体重100kg。血液型O型。趣味は世界旅行、飲酒、プロレス。特技はプロレス。メキシコでプロレスライセンスを取得し、お笑いプロレス団体西口プロレスの所属レスラーとしても活動していたが、腰と膝を悪くし不定期参戦となった。2019年にアンドレザ・ジャイアントパンダと引退を賭けて敗戦し丸刈りにされレスラーを引退した。Twitter:@tokyodynamite