胸元に走った衝撃とはいったい・・・
自分の胸元に目をやると、彼女の右手の指が、Tシャツ越しにだが乳首に触れているのだ。しかも、それは偶然ではなかった、何度も触れるのだ。布一枚を挟んでいても、この衝撃。少し薄目を開けると、彼女は目を閉じたまま。その右手は乳首をずっと触っている。そのテクニックがすごいのだ。上下左右だけじゃない。時には斜めに乳首を通過したり、波を打つように乳首を通過する。
たまらない。あまりにも気持ち良くて、どんどん興奮してくる。彼女の右手に左乳首を預けたまま、唇を一度離し、見つめながら彼女の胸元のボタンを上から外していった。4つめを外したときに気づいた。彼女、下着をつけていないのだ。
“な、なんだって……”
下までボタンを外し終わると、色白で細身の綺麗な肌が惜しげもなく見えた。すると、つい今の今まですごいテクニックで動いてくれていた彼女の右手が、Tシャツ越しの乳首から離れた。
“……えっ”
次の瞬間、Tシャツはめくられ、剥き出しになった乳首に向かって、彼女の顔がゆっくりと近づいてくる。その口からは少しずつ舌が出始めている。
“これは、もしかして……”
直後、あまりの衝撃に気が飛んでしまいそうだ。左乳首の上を彼女の舌が何度も通過する。何度も。何度も。そこからは深く考えられなかった。ふわふわした気持ちのなか、彼女のほうを向いて横になっていたはずが、いつの間にか仰向けになっていて、ほぼ動かなくても、次々に“こんなの味わったことない……”そんな幸せが押し寄せてくるのだ。
“最高だ……”
ふわふわした気持ちで天を仰ぐ。部屋の中をなんとなく見る。とても女の子らしい部屋。可愛い家具、暖色をメインにした素敵な色合い、そして鼻につんとくる変な匂い……。
“鼻につんとくる変な匂い?”
そういえば、来たときからずっと、なんか変な匂いがする。外は天気もいいのに、じめっとした感じもする。なんだろうこの変な感じ……。
ただ、テクニックがあまりにすごいから、そちらに魅力されて夢中になってしまう。
天を仰ぎながら“日当たりが悪いのかなぁ? だから外観が立派なのに安いのかもなぁ”なんてことが頭をよぎるが、とにかくテクニックがあまりにすごいので、すぐに行為のほうに夢中になる。その繰り返し。
ベランダで手を振る彼女、その後ろには・・・
ひたすら気持ち良い幸せな時間を過ごし、夜も遅い時間になって、この日は帰ることに。泊まりたかったけど、それはまた次のお楽しみにしておこう。
「じゃあね。またね!」
彼女とは玄関でバイバイして、一人でマンションの下に降りた。
エントランスを出て、マンションの表の道路を歩きながら、“あ、そういえば、こっちの道路側だったよな、彼女の部屋”と思って見上げると、窓から顔を出して手を振ってくれていた。たまんない。すごく可愛らしい。
「ばいばーい!」
大声を出し、手を振り返す。
そのとき、ベタに彼女を二度見してしまった。
笑顔で振り返してくれる彼女の、その後ろに知らない女が立っている。
その女は宙を見ているようだったが、急にこっち見下ろしてきた。
目が合った。そう思った途端に、あの匂いがツンとくる。
“うわ! この匂い……あの部屋でした匂いだ!”
鳥肌が立った。こんなにも外観が立派なのに安いのって、やっぱり……。そう思うと、とても恐ろしくなってきた。
普通、そういった思いをすると、そこに二度と行かない。二度と近づかない。なんてことになると思う。
それなのに彼、その後もその部屋に何度も何度も訪れてしまうのだ。部屋に入ると、あのじめっとした恐ろしい匂いがする。それはつまり、そういうことなのだ。そんな恐ろしい部屋なんだ。そうわかっているのに、また行ってしまう。
まるで取り憑かれたかのように、その部屋に何度も何度も何度も行ってしまう。
なぜかって?
彼は言う。“あの匂いもあの恐ろしさも超えるほど、その子のテクニックがすごいから”
だそうだ。