③裁判離婚

裁判離婚は、家庭裁判所に訴えを提起し、離婚原因の存在を主張・立証し、離婚原因があると認められれば、判決の確定により、離婚が成立するというものです。

離婚訴訟では、子どもがいる場合には、親権者についても判断されますし、請求があれば養育費、慰謝料、財産分与等についても判断がされます。

裁判は、知識やテクニカルな要素も必要となり、自分で行うのはとても大変。ですので、弁護士に依頼するのが一般的です。そして、調停の場合は弁護士に依頼しても、原則としてご本人も出席することになるのですが、裁判の場合は通常、弁護士のみが出席すればいいので、基本的には弁護士任せという形になることが多いです。

ただ、ご自分で行う場合もあるでしょうし、また弁護士に依頼する場合もどのような手続か分かっているほうがいいと思いますので、裁判手続についてもわかりやすく、しっかりと説明していきたいと思います。

裁判を提起する際には、訴状を裁判所に提出します。訴状についても家庭裁判所に書式が用意されており、裁判所のウェブサイトからダウンロードすることもできます。離婚裁判については、調停と異なり、相手方の住所地を管轄する裁判所と自分の住所地を管轄する裁判所のいずれにも提起することができます。

裁判所に納める手数料は、通常請求する利益を金銭に見積もった額(訴額)によって決まるのですが、離婚のみを請求する場合、離婚自体は金銭的な評価ができません(算定不能)。

ただ、算定不能な場合には、訴額を160万円とみなすという規定があり、訴額160万円の場合の手数料は1万3,000円です。つまり、離婚だけを請求する場合の手数料は1万3,000円です。

離婚だけでなく、慰謝料も請求する場合は、請求する慰謝料の額と160万円の高い方が基準となります。例えば、慰謝料として300万円を請求する場合は、こちらの方が高いのでこれが基準となり、訴額300万円の場合の手数料は2万円となっています。

また、養育費、財産分与、年金分割などを請求する場合は、それぞれについて別途1,200円ずつの手数料がかかります。養育費は、お子さん1人について1,200円ずつです。養育費や財産分与の額がどれだけ高くても、一律1,200円です一方、お子さんの親権の指定については別途手数料がかかりません。

以上を前提に、

①離婚
②親権者を自分にすること
③慰謝料として300万円
④お子さん2人の養育費としてそれぞれ成人するまで月5万円
⑤財産分与として現金1,000万円
⑥年金分割

の6つの事項を求める裁判で手数料がどうなるかを計算してみましょう。

まず、①離婚(160万円)と③慰謝料(300万円)については、高い方である300万円を基準とした2万円になります。②については別途手数料がかかりません。次に、④以下については一律1,200円ですので、④養育費2人分は1,200円×2、⑤財産分与は1,200円、⑥年金分割が1,200円となります。

したがって、この場合に納める手数料の合計額は,①③2万円+④2,400円+⑤1,200円+⑥1,200円=2万4,800円となります。

このように、高額になる場合も少なくない財産分与や養育費について、その手数料がそれぞれ一律1,200円であるため、離婚の裁判の手数料は、法外な慰謝料を請求でもしない限り、それほど高額にはならないといえます。

この手数料以外に6,000円程度(裁判所によって異なります)の郵便切手代がかかります。弁護士に依頼すると、これらに加えて弁護士費用がかかります。

よくされる質問に「勝ったら、弁護士費用は相手に請求できるのですか?」とか「負けたら、相手の弁護士費用を払わなければならないのですか?」といったものがありますが、原則として、勝っても相手に請求はできませんし、負けても相手の分を払う必要はありません。

例えば、完全に勝訴をすると判決文に「訴訟費用は被告の負担とする」と記載されますが、この「訴訟費用」には弁護士費用は含まれません。

ただ、不法行為に基づく請求(離婚の場合であれば、不貞やDVなどについての慰謝料請求)については、実際に裁判にかかる額ではありませんが、判決で認められた賠償額の1割程度が弁護士費用として認められる場合があります。