決死の覚悟で生まれた新ネタ

これでダメなら、もう芸人を辞めようかと思って始めたライブで生まれたネタ「お前誰だよロックンロール」。ぺこぱ松井との共同作業で完成したこのネタは、本当に自信作だった。R-1には、もちろんこのネタで挑むつもりだったし、このネタと一緒に心中するつもりだった。

毎年毎年、予選ではねられ、そのたびに地獄に落ちたような気分になるR-1ぐらんぷり。しかし、2014年の俺は何かが違った。いつもならネタ選びの段階で迷いがあったが、お前誰だよロックンロール以外のネタは頭になかった。それでダメなら本望だとさえ思っていた。

ネタ中の「音出し」は、ずっと一緒にやっていた松井に頼むことにした。松井も快く引き受けてくれた。だが、予選のウケはそこまでよくない。「これは当落選上ギリギリかな……」という反応で、そのたびに冷や汗をかいた。

審査員をやっていた作家さんからは「他にもいいネタあるんだからネタ変えたら?」と言われる始末だ。しかしネタを変えたら、昨年までと何も変わらないような気がした。

3回戦の会場は、新宿のルミネTHEよしもと。後半ブロックのトップバッターだったが「ほら見たことか!」と言いたくなるほど爆発的にウケた。袖で見ていた松井も「絶対受かってますよ!」と興奮気味だった。

迎えた準決勝。準決勝ともなると顔ぶれが豪華で、そのなかに仲の良い芸人仲間、じゅんいちダビッドソンさんやロビンフットのおぐさんなどがいるのがうれしかった。だが、ここでトラブルが発生する。準決勝が押してしまって、音響をやる予定だった松井が「このあと事務所ライブだから、帰ってもいいですか?」と言ってきたのだ。

俺は唖然とした。そして腹が立ってきた。だったら最初から準決勝の音響を引き受けるな、と。今日は事務所ライブあるので他の人に頼んでください、と最初から断ればいいだろと。

マネージャーも俺も説得したが、松井は首を縦に振らない。「事務所ライブは休んでもいい」「準決勝を袖で見たほうが遥かに大きな経験だ」と言ったが松井は帰った。一回言ってしまった手前、引っ込みがつかなくなった部分もあるのだろう。

結局、音出しは仲のいい芸人仲間に頼むことにした。この件は後日たっぷり説教したし、松井も号泣して謝ってくれたから、今となっては笑い話だ。