一番憧れがあるのは向井秀徳さん
――『遠泳』『銀色のQ体』のお話をさせていただきたいのですが、どちらも素晴らしかったです。若い世代の楽曲について「OOみたいだね」っていうのはダサいなと思ってるんですけど、中村一義さんや七尾旅人さんを初めて聞いたときみたいな衝撃がありました。こういう音楽のスタイルが成立して、しかもそれがカッコいいっていう。
皆川 ありがとうございます、うれしいです。
――こんなに自由でいいんだと思いました。あと、TikTokなどで最近の音楽に触れていると、すごくカッコいいけども、全部メインディッシュみたいな曲が多くて、食傷気味になることが多々あるんです。でも、この2曲はちゃんと前菜からデザートまでフルコースで味わえる楽曲だなと思いました。
皆川 たしかに、いわゆるボカロと言われる曲は音数が多くて、一聴すると派手に聞こえるけど、それでメロディーが疎かになるのはイヤで、そこは気をつけていますね。
――ひとつ気になったのですが、『銀色のQ体』の歌詞に出てくる「スーパーカー」って、バンドのスーパーカーですか?
皆川 (笑)。そうです! 好きなんです。
――そうですか! 自分と10代の若者、共通の好きなものがあって、なんか安心しました。Twitterにスーパーカーの『Lucky』をあげられていたので、もしかしたらとは思っていたのですが……。
☺️
— 皆川溺 (@23dimensionsP) September 22, 2022
SUPERCAR / Lucky (Official Music Video) https://t.co/OSvaw2L7IG @YouTubeより
皆川 (笑)。
――ミュージシャンの名前をこちら側からあげてしまったんですが、皆川さんの一番根幹にあるミュージシャン、バンドと聞かれると、なんと答えますか?
皆川 一番憧れがあるのは、向井秀徳さんですね。すごく憧れてます。
――あー! なるほど。専門的なことはわからないので、見当外れだったら申し訳ないんですが、向井さんの作る音の間と、皆川さんの音の間は近いところにある気がします。
皆川 うれしいです。具体的にこうなりたい、と感じたパフォーマンスがあって、今年の3月にYouTubeで公開された「向井秀徳アコースティック & エレクトリック - 自問自答」がそれなんですけど、本当に衝撃だったんです。憧れですね。
〇Mukai Shutoku Acoustic & Electric - 自問自答 3.13 2022
――あれは素晴らしいですよね。皆川さんのような若い方が向井秀徳、ナンバーガール、ZAZEN BOYSをいいと思っていることに、勝手にすごくホッとしちゃいました(笑)。
皆川 (笑)。
この期間が今後の音楽人生において大事な時間
――年下の方から「自分も皆川さんみたいに活動したい」というような相談を受けることが、これから増えてくるかもしれませんが、そういう方に伝えておきたいこと、アドバイスなどはありますか?
皆川 これは自分が置かれている状況の話でもあるんですけど、今の自分が遠泳みたいな曲を作れるのって、今現在、親に育てられている最中っていうのも大きいと思うんです。自分で言うと偉そうに聞こえてしまうかもしれませんが、もっと数字を取ろうとすれば、取れる音楽を作ることができると思うんです。
でも、今はそっちよりも、自分の好きな音楽を好きに作ることができる環境を与えてもらっている。自分がひとり暮らしをしていて、音楽を仕事にしている状況だったら、フルで好きな曲を作るってことが難しいんじゃないか、と。
――なるほど……。
皆川 生活に不自由のない状態で作れている状態っていうのは、本当にありがたくて。なので、たぶん今、この期間が今後の自分の音楽人生において、すごく大事な時間だなと思って過ごしています。だから、僕自身も数字とか気にせずに作れるうちにたくさん作っておこうと思うし、僕よりもっと下の世代にはそう思っていてほしいですね。
――すごいですね。モラトリアムの期間を自覚して、俯瞰で眺めている方に初めてお会いしたので、衝撃と感動が一緒に……。
皆川 いえいえ(笑)。
――ちなみに、皆川さんの歌詞ってすごく特殊だなと思うんですが、発送の源はどういうところにあるんですか?
皆川 歌詞に関しては、すごくパーソナルなことを書いているという自覚があって、他の人は理解できないんじゃないかと思うんですけど、少しでも共感できるところがあったらいいなと思います。正直、歌詞を書いているというよりは、日記を書いている感覚に近いですね。
――「お仕事ください」ってツイートされていたのが印象的だったんですけど、最後に具体的に2023年にやってみたいお仕事についてお聞かせください。
仕事を
— 皆川溺 (@23dimensionsP) September 29, 2022
ください
皆川 ひとつはアニソンをやってみたいんです、同世代のSAKURAmotiさんが『うる星やつら』のオープニングテーマの曲を作られたり、大好きなボカロPの椎乃味醂さんが作った『ノミック』って曲がアニメのエンディングテーマになってたり、正直すごく羨ましいんです。自分もアニメが好きで、このアニメに曲を書きたいなと思うことがあるので。もうひとつは、ずっと前から言ってることなんですけど、アイドルをプロデュースしてみたい。
――えー、すごいですね、いい野望ですね…!
皆川 尖ったアイドルグループを作ってみたいな、という気持ちがあって。だから、メンバー決めから携わりたいんですね。
――先程、アニメがお好きとおっしゃっていましたが、アイドルもお好きなんですか?
皆川 いえ、アイドルはそこまでなんですが…(笑)。逆に距離があるからこそ、こういう曲にしたらいいのになとか、こうすればもっといいのになって思う感じでしょうか。