日本中を熱狂の渦に巻き込んだ、2022年のW杯カタール大会。日本代表だった選手たちはそれぞれの所属クラブに戻り、次の北中米大会に向けた準備を始めています。

イングランド(プレミアリーグ)やスペイン(リーガエスパニョーラ)では、すでにリーグ戦が再開されており、連日にわたって日本人選手の活躍が伝えられています。

そのなかでも、イングランドのブライトンに所属する三笘薫の活躍が止まりません。今月14日におこなわれたプレミアリーグ第20節、ブライトン対リヴァプールの試合でも、三笘は躍動しました。

リーグ優勝13回を誇るリヴァプールは、世界的にもトップクラスのクラブになります。この試合で三笘は、イングランド代表であるアーノルドのマークを受けましたが、そのアーノルドを何度も抜き去り、チームのチャンスを演出。ブライトンの勝利(3−0)に貢献しています。

三笘が活躍できる理由は、所属するブライトンが展開するサッカーが優れているからです。そこで今回は、ブライトンを率いるロベルト・デ・ゼルビ監督にも注目し、ブライトンが直面している課題についても考えたいと思います。

シーズン途中から指揮を取ったデ・ゼルビ監督

ブライトンは、今シーズンの途中で監督を引き抜かれています。ブライトンの監督は当初、グレアム・ポッターでしたが、プレミアリーグが始まったばかりの2022年9月、ビッグクラブであるチェルシーに異動してしまいます。

この事態を受けてブライトンが関心を寄せたのが、イタリア人のロベルト・デ・ゼルビになります。現在43歳のデ・ゼルビは、イタリアリーグ(セリエA)で実績を重ね、2021年にはウクライナの強豪シャフタール・ドネツクの監督に就任しました。

チームは好成績をおさめていましたが、2022年2月から始まったロシアのウクライナ侵攻によって、ウクライナリーグは中断。デ・ゼルビとシャフタールは、双方合意のうえで契約を解除します。新しい監督を探していたブライトンは、フリーの状態だったデ・ゼルビにアプローチし、今回の契約にいたりました。

デ・ゼルビの戦術を簡単に表現すると「攻撃的なサッカー」になります。最後尾のディフェンダーからしっかりとボールをつないでゴールを狙う、いわゆる「ポゼッションサッカー」と呼ばれるスタイルです。

ブライトンには三笘以外にも、素晴らしい選手(エクアドル代表のカイセドとエストゥピニャン、イングランドのマーチなど)が揃っているため、デ・ゼルビの戦術がとても有効に機能しています。選手が流動的に動きながらもスムーズなパス交換が続き、ゴールチャンスが演出されるため、多くのサッカーファンがブライトンを絶賛しています。

デ・ゼルビが卓越している点は修正力にもあります。同じ左サイドを形成する三笘とエストゥピニャンですが、試合中に2人のポジショニングが重なってしまい、ドリブル突破が魅力である三笘の持ち味が生かせない場面が多く見られました。

デ・ゼルビは三笘のドリブルを引き出すために、エストゥピニャンのポジショニングを修正します。この修正が功を奏しているため、今シーズンの三笘の大活躍につながっているのです。

トッププレイヤーとして認められた三笘薫

〇三笘薫の技ありパスからリヴァプール相手に先制点[アベマサッカー]

プレミアリーグ第20節、ブライトン対リヴァプールの試合での先制点は、三笘のパスを受けて、最後はソリー・マーチが得点しています。このゴールシーンですが、三笘はシュートを打つ寸前でパスに切り替えました。自分がシュートするよりも、パスをしたほうがゴールの確率が高いという判断です。

ドリブルばかりが注目されてしまいますが、三笘が最も優れている点は「賢さ」になるでしょう。海外の選手は自分がゴールを取るために、どうしても自己中心的なプレーをしてしまう傾向が強いですが、三笘はエゴを出さず、常に最適なプレーを選択することができるのです。

〇三笘薫が超絶ゴラッソ!! 華麗に右足を振り抜く!![アベマサッカー]

1月21日に行われたプレミアリーグ第21節、ブライトン対レスターの試合で、三笘はスーパーゴール決めました。このゴールは、今シーズンにおけるプレミアリーグの最優秀ゴールを受賞するのではないかと、早くもサッカーファンのあいだで盛り上がりを見せています。

この試合の対戦チームであるレスターは、三笘対策を入念に準備してきました。三笘に対応したのは、ベルギー代表のサイドバックであるカスターニュです。常にワンマークをして三笘に張り付き、仕事をさせないようにしていました。

対戦チームが対策を練ってくる時点で、三笘がトッププレイヤーとして認められたことを意味します。しかし、その対策をすり抜けてゴールを決めたことで、多くのビッグクラブが三笘の獲得を本格的に検討し始めたはずです。

アーセナルやリヴァプールなど、ビッグクラブに移籍する三笘を見られる日はそう遠くはないでしょう。