センスのなさをあえて競う

もともと、以前から永野さんとオジンオズボーンの篠宮さんが、ライブのエンディングでふざけていて、それが面白かった。

「これずっとしたいね。ずっとこれでいいじゃん。みなみかわ君やらない?」

その着想だけでできたライブ。信じられない。

ライブの特徴としてはこうだ。

「オシャレな笑いはしない(できない)」

「前に出たいときだけ前に出る(ジャズに近い)」

「伏線はただ張るだけ(誰も拾わないこともある」)

潔い。超原始的で最高なライブである。なぜなら、やっている自分たちが楽しいからです。

初めてのノーセンスユニークボケ王決定戦は2012年。出演は永野さん、オジンオズボーン篠宮さん、サンシャイン池崎、新宿カウボーイかねきよさんなどなど。そしてMCは私、みなみかわ。入ったお客さんは40人弱。それぞれの芸人のファンが少しずつ集まってくれたのだろう。その当時、誰一人としてテレビに出ていない。

幕が切って落とされる。ただただ脈絡無くボケる芸人たち。

とても偏ったノリである。客席の反応はよくわからない。

モノボケや大喜利に始まり、おそ松くんのイヤミの「シェー!」を誰が一番面白くできるか? というコーナー……。

どうでしょう? 3、4年目の若手芸人は膝が震えてできないでしょう?

記念すべき第一回のライブは無事に終わった。会場に足を運んでくれたお客様のアンケートを見る。

「面白かった」
「何がやりたいのかわからない」
「時間返せ」

企画を考えて、メンバーを探して、告知しまくって、ステージで緊張して、汗かいて頑張って「時間返せ」である。

お金ならまだしも、絶対に返せない時間を要求するあたり、本当の心底からの怒りが窺える。さすがにちょっと凹む。

しかし、打ち上げに参加している芸人の顔は晴れやかだ。

「最高なライブだったね! え、『時間返せ』って書かれてるじゃん! ギャハハハ!」

もう大盛り上がりである。そんなこんなで始まった「ノーセンスユニークボケ王決定戦」も11年目を迎える。

この10年のあいだに篠宮さんがTHE MANZAIで決勝に行き、サンシャイン池崎が「イェーイ」で売れ、永野さんが「ラッセン」で売れ、流れ星のちゅうえいさんが「ひじ祭り」で売れたりと、結果的に出世する人間が多いライブとなったし、名古屋のテレビ番組でも取り上げられたし、Abemaで2時間やらせてくれたこともあった。ある程度は認められたと言ってもいいだろう。

「時間返せ」って書いた人は、もう二度と来ないでしょうが、好きな人は好きなライブ。

そんな「ノーセンスユニークボケ王決定戦」は今年3月22日にあります。ぜひともお越しください。

(構成:キンマサタカ)

次回の『みなみかわのないないはなし』は、2月28日(火)更新予定です。お楽しみに!!


プロフィール
 
みなみかわ
1982年生まれ。大阪府出身。2015年7月〜2019年1月まで「ピーマンズスタンダード」として活動。 平成25年度 漫才新人大賞決勝進出。呼吸法で痛みをなくすロシアの武術「システマ」を体得。2008年にはピンで『あらびき団』(TBS)でプチブレイク。『エンタの神様』(日本テレビ系)にも定期出演。『ゴッドタン』(テレビ東京)、『お笑い向上委員会』(フジテレビ)、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)など人気番組への出演が続き、再ブレイク。Twitter:@p_minamikawa、YouTube:みなみかわ