夢を持つ人を応援したいのでマネージャーもしてみたい

――お仕事以外の幸せな時間は?

「ぼ〜っとしているときが幸せです。家に定位置があるんです。ソファがあって、目の前にiPadを置けるようになっていて、脇にパソコンがあって、二画面をぼけ〜っと見ているときが最高に楽しいですね。

最近は配信が充実していて、同じゲームでも別の視点で展開しているものがあり、どっちも見たいから、手元で絵を描きながら、二画面を流し見して、寝落ちまでが一連のセットです。手が届く範囲にティッシュ、水、みかん……なんでもあって、漫画はタブレットに入っているから、“絶対にここから動かないぞ”みたいな(笑)」

――今後、やりたいことはありますか。

「形は違っていくかもしれないのですが、もっと自分の考えをみんなに知ってほしい。まだ経験はそこまでないかもしれませんが、今まで詰め込んできたものを、今度はちょっとずつ分ける側に回っていきたいなと思っています。これまで教えていただいたり、経験させていただいてきた、たくさんのことを独り占めするのではなく、“こういうときはこうだよ”“こうしたほうがいいよ”“こう聞いたよ”とか。

最近、特に夢を応援する仕事がしたいって思うようになったんです。甘く見ていると思われるかもしれませんが、一度、マネージャーをしてみたい。上から目線で何か言うより、隣で支えたい。だから、マネージャーなんです。いつも間近で見ていて、“こんな大変な仕事、私にできるんだろうか”って自分でもわかっているけれど、夢を持っている人を手助けしたいんです。

私の古巣で今も現役でやっている子たちがいて、彼女たちに腐ってほしくない。彼女たちが悩んでいることは、私がアイドル時代に悩んでいたこととは同じではないけれど、きっと似ているものだから。1人じゃ絶対、解決できないって知っているし、それを一緒に解いてもう一度夢につなげる仕事をしたい。どうしたらいいのか、今はまだわからないですけど」

▲休みの日はインドアで定位置から動きません

アイドルは天職。10代で経験できてよかった

――アイドルをやっていてよかったですか。

「アイドルは天職でした。すごく楽しかったです。しんどいこともあるけど、それは社会人になったら、誰にでもあることですよね。それを10代のうちにやっておけたのは、すごく大きかったなと思います。“なんでこんなことをやらなきゃいけないんだろう”を完全に大人になる前にできた。あの時だから思えたこと。あの時だから、できた仕事のやり方。

だから大人になった今、“じゃあ、こうしよう”ができています。順位が如実に出てしまう世界ですから、10代半ばのド思春期に周りで一緒にやっている子たちが上に行く、というのは堪えるものがありました。でも周りにいた子たちは、誰かの不幸を一緒に悲しめて、人の喜びを喜べる人たちだったんです。蹴落とすって感じじゃない。

だから、悔しい思いもあったけど、一緒に喜べた。近くで努力をしている姿を見てきたから、総選挙10位に入ったら、自分じゃなくても、めっちゃうれしくて。しんどいことも多かったですけど、しんどかったことはほとんど覚えていないんです。出来事は覚えているけど、感情はもう忘れちゃった。あの頃、よかったなって。“いい思い出になっている”というのはこういうことかと思っています(笑)。

10代って大人に敵意、剥き出しじゃないですか。今だったら、そんなことないってわかりますけど、子どもの頃に出会う大人は敵に見えることが多いですから。“負けられねぇ!”みたいな変な団結力があって、体育会系で面白かったです。友人もできましたし、その友情はこれからも一生、続いていくんだろうなと思います。なくてよかったことなんか、一つもなかったです」

――30代に向けて、どんな女性になっていきたいですか。

「これはもう、ずっと自分に言い聞かせているんですけど、年下から学べる大人でありたいって思います。流行のものを見ると、“昔はこうだったよ”とか、早くも私が言っているんです(笑)。特に私はアニメの世界、二次元が好きなので、移り変わりがすごく早くて。

そういうのを見ると、『いやいや、そうじゃない。昔のあれがよかったんだよ』とか、自分の好きなものにプライドがあって、落としたくない気持ちについなってしまう。だけど、そうじゃなくて、わかりやすく言えば、TikTokみたいな『今、こういうものが流行ってますよ』というものに対して、『そうなんだ。教えて』って年下に言い続けられる大人になりたいなと思いました」

▲年下から学べる大人でありたいと自分に言い聞かせている

――三田さんが好きになる作品には何かポイントがあるんですか。

「恋愛ものだったら、恋愛する過程よりも成就してからが好きです。少女漫画がすごく好きなんですけど、“好きだな、付き合えるかな“みたいなところはものすごく綿密に描いているのに、付き合った途端に“ハッピーエンド!”っていきなり、終わっちゃうものが多くて。私はそれより、そこからが見たいんです。イチャイチャしているところを一生見ていたい。少女漫画の恋愛系はそういうのが好みです。

少年漫画においては、敵キャラにフィーチャーしているものが好きかもしれません。『鬼滅の刃』がわかりやすいですけど、あれも鬼側の半生を丁寧に描いています。スポーツ漫画ならライバル校が負けた瞬間、じつは裏でこういう努力をしていました、というようなエピソードだったり。アナザーストーリーが好きなのかもしれないです。話しながら、今、気づきました(笑)」

――最後に読者の皆さんに、おすすめのアニメ作品を教えてください。

「『さよならの朝に約束の花をかざろう』、通称・さよ朝という映画があるんです。これが恋愛ともいかないし、サスペンスにもならないんですけど、人生なんです。生きる時間が人間とは違う、めちゃくちゃ長生きする種族がいて、その種族の女の子と人間の子どもの話なのですが、流れる時間がまるで違うから、子どもがどんどん大人になっていく。その長寿の女の子の気持ちと、子どもだった男の子の話がピタピタに泣けるんです。

映画館に見に行って嗚咽が出たくらい、しばらく涙が止まらなかったです。おすすめを聞かれたときには必ず、この作品を挙げています。映画だから見やすいですし、ぜひ。そこにハマってくれたら、他にもいっぱいあるんで! とりあえず、登竜門を一回くぐってもらって、どう思ったか言っていただければ、また次の作品をお教えしたいです! アニメがメジャーになってきたので“もっとこういうのもあるよ”って、オタクだから教えたくて、語りたくて。ぜひ、見ていただきたいです」


プロフィール
三田 麻央(みた・まお)
1995年9月9日生まれ。大阪府出身。2011年6月5日にNMB482期生としてデビュー。2019年2月にNMB48を卒業。以降、ライトノベル『夢にみるのは、きみの夢』で小説家デビューを飾り、声優、イラストで個展を開くなどマルチな活動を行う。舞台『DEMON〜ありがとうって言えなくて〜』など、数多くの作品に出演。2月22日~主演舞台『INDESINENCE Case:Beautiful Vermilion Ways』に出演している。Twitter : @kyunmao_m99Instagram : @kyunmao_m99
<公演情報> 
INDESINENCE Case:Beautiful Vermilion Ways
公演期間:2023年2月22日(水) ~ 2023年2月26日(日)
会場:新宿村LIVE
チケット情報:カンフェティ