突然舞い込んだ幸運

それまでとはまったく違う「スター扱い」をされていた2人。泊まりの営業だったので、久しぶりに3人で部屋飲みをする。外の居酒屋はどこも営業していない。久しぶりの3人の場は盛り上がり、昔話に花が咲く。売れても俺たちの関係性は変わらないんだよなあ。よし、俺がやつらにビシッと言うしかない。

「人と挨拶するときは帽子とれよ。今朝のお前、帽子被ったままで偉そうに見えたぞ」

一般的にほとんど気にならないことでも、礼儀を大切にする世界で生きている芸人は、そういうことをとても気にする。売れたおかげで誰も注意してくれないなんて、かわいそうだと思ったから、酔っ払う前に松井に言った。

「すいません、気をつけます!」

ぺこぱは、この先どんどん売れていくだろう。彼らがもし間違ったことをしたとしても、俺だけは注意しようと思った。

この頃は、ウーバーイーツをやりながらいろいろ考えた。コロナみたいなことが起こると収入は途絶える。何か別の仕事もやったほうがいいのかもしれない。

知り合いの芸人から、デリバリー弁当のフランチャイズが資本金0から開業できる、と聞いて興味を持ったこともあった。料理なんかやったことなくても、ノウハウを学べば1年くらいで開業できるらしい。嫁にそのことを伝えると、それまで見たことない真剣な顔でこう言われた。

「ライブから帰ってくると、目をキラキラ輝かせてるよね。それと同じくらい情熱を注げるならやったらいいよ。お弁当屋さんだって、情熱がなかったら成功しないと思う」

そのとおりだと思った。金のためとはいえ、やっぱり弁当屋に捧げる情熱はなさそうだ。

そんなある日、ラッキーな仕事が舞い込んだ。オードリーのオールナイトニッポンのゲストに、俺とぺこぱの2人が呼ばれたのだ。

オードリーはラジオで、かねてから俺のことを話題にしていたから、リスナーは俺のことを知ってくれてる人が多かった。だが、ぺこぱファンからしたら「TAIGAって誰?」といったところか。

ラジオでは俺とぺこぱの出会いや、当時のエピソードなどをたっぷり話した。5人で腹を抱えて笑いながら好き勝手喋っていたら、それが面白かったらしく、すぐに話題になった。

それから、ぺこぱの番組や記事などで俺が紹介されることが増えた。「師匠のTAIGAさんに“スーツにしろ”と言われ、着物からスーツに変えました」というネタさえ、ネットニュースになる。売れても俺のことを気にかけてくれるなんて、律儀な後輩だと思った。

すると『オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。』(中京テレビ)という番組に、ぺこぱが出演した。松井が「オードリーさんと僕たちには共通の師匠TAIGAさんがいますから」という言葉に制作側が興味を示した。