破天荒芸人はもういない
この世界にいると「あいつは売れると思ってたんだ」と言うヤツがいる。それを聞くたびに、かっこ悪いなぁと思っていた。
オードリーやぺこぱにしても、俺は売れると思って付き合っていたわけではないし、売れたあとも、そんなことを言った記憶は一度もない。当時はただ一緒にいて楽しかった、人(にん)が面白いヤツだなとは思っていた。それだけだった。
人(にん)以外でいうと、売れていく芸人たちに共通するのは、やはりみんな真面目で優しい。
「あなたは真面目過ぎるから売れないなんだよ〜」なんてダメ出ししてくる者がいるが、おそらく、芸人=不真面目だと思っているのだ。昭和の芸人は不真面目で酔っ払って収録することもあったようだが、今の芸人はみんな真面目だ。
真面目に人が面白いと思うことをいつも考えている。不真面目な人は今のお笑い界では売れるのは厳しい。そして売れてく芸人はみんな優しい。売れない状態で芸人を続ける地獄や苦しみを知っているから、誰に対しても優しい。
昔の芸能界は、周りを引きずり下ろしてでも、自分が上に行こうとするくらいの気持ちがないと売れないと言われてたし、実際そうだったのかもしれない。
しかし、時代も変わった。
芸能界なんて人が人を使う仕事なんだから、性格が悪い人が残っていけるような場所ではないのは当然。そしてイジる側もイジられる側も、全てをさらけ出してお腹を見せてくれるような芸人でないと売れない。
「ここまではイジっていいけど、これ以上は踏み込んでくるなよ」という雰囲気を出している人は売れない。自分もどこまででも言ってくれていいから、そっちのこともメチャクチャ言うよ。これくらいのスタンスの人でないと売れないと思う。
売れてない芸人にはそれができない。虚勢を張った芸人を舞台でイヤな感じにイジってもウケないのはわかってるから、周りもやらない。
相手が怒るか、もしくは痛々しく見えて終わってしまう。だからやらない。イジるほうだって人を選ぶ。イジる側もイジられる側も、どれだけ相手にお腹を見せられるかが大事だと思う。これまで売れていった芸人たちは、みんなそんな感じだった。