親ってスゲー!
子供が生まれてからの生活はとにかく楽しかった。
もともと子供が好きだった俺にとって、我が子との生活は毎日が充実していた。とにかくかわいかった。
売れてないこともあって、子供といる時間は世のお父さんよりも長かっただろう。お金はないが、時間だけはいくらでもあったから。子供が生まれるまでは俺も随分と意気込んでいたもんだ。人生の大切なことを教えてやらないと、なんて思っていたものだが、親の俺たちのほうが子供から教えてもらうことが多かった。
赤ん坊の感情表現は一つだけしかない。泣く、ただそれだけ。
赤子が泣いている。なんで泣いてるんだろうと考える。ミルクはあげた。オムツも変えた。それでも泣き止まない。歌を歌ったり、本を読んだりしても泣き止まない。抱っこしても泣き止まない。何が悪いのか全くわからない。
すると嫁が言った。
「その格好が寒いんだよ」
もう一枚上着を着せて、毛布でくるんで抱っこをする。すると泣き止む。やはり、お腹を痛めてからずっと一緒にいるだけあって、子供の気持ちが俺よりわかるんだなぁと感心した。
哺乳瓶に粉ミルクを入れ、お湯で溶かして、人肌に冷まし、何度も温度を確かめてから子供にあげる。あっという間に飲み終わると「もっと飲みたいのにー!」と泣く。たまらなくかわいかった。
風呂に入れてる最中におしっこを顔にかけられたり、オムツ交換するときうんちをブリブリされても、たしかに臭いかもしれないけど全く嫌な気にはならなかった。
親ってスゲーなぁ。
そういえば子供の頃、父親に言われたことを思い出した。風邪をひいた俺がトイレで吐いたときのことだ。父親が俺の背中をさすりながらこういった。
「他人のゲボは気持ち悪いけど、我が子のは全然気持ち悪くないなぁ」
まさにそれだ。確かに我が子のうんちやゲボなんて全く嫌な気持ちにならない。
つかまり立ちができるようになると、今度は自分で歩き出そうとする。初めて一人で歩き出したとき嫁が大きな声を出した。
「見て、歩くよ!」
急いでスマホのカメラを起動する。ヨチヨチと歩き出す我が子の大きな一歩を見て、俺は本当に感動した。