とんでもない集団を作り上げる酒井!?

――ぜひ語ってください! ネタの完成まではわりと早いほうですか?

林田 ほかの人がどうなのかはわからないですけど、そんなにアドリブがすげぇできる感じでもないので、かかるときはかかりますね。

酒井 いいネタだと早いけど、絞り出すとなると、どうしても時間はかかりますよね。ふたりで集まっても1日、何も出ない日なんて全然あるし、2~3日何も出なくてやばいなって、焦って諦めたときに出てきたりもして。自分を解放してあげるっていうか、脳みそがぽっと柔らかくなると、あぁ、これ面白いなって思えるものが出てきて……あはは! きっついなぁ、これ。こういうことを居酒屋とかで後輩に聞かせてるんですよ、僕。

林田 イエスマンを集めてメモを取らせてるんだよね? 酒井軍団っていう謎の組織があるんですけど、僕らはネタ番組用の稽古みたいなのをしてるとき、手伝い半分で来てくれてた一番下っ端のまちょねーず・坂本っていう男が、ずっと酒井が言うことをメモしてまして。結構、変なことやズレたことを言ってるのに、なるほどってメモを取ってるのを見て、こいつ、とんでもない集団作ってるぞって思いました。

酒井 今も呼んだらすぐ駆けつけますから。僕、お笑いの祖かもしれないです。

林田 あははは! それ、マジで怖いわ。坂本は今、危ないところにいますよ。変な教科書が出来上がりつつありますから。

――なぜそうなってしまったんですか? 崇められるまでに、何かきっかけがあったから、そうなったわけですよね。

酒井 脳にチップを埋め込みました(笑)。

林田 本当に怖いわ! まぁ、僕らが今芸歴7年目で、まちょねーずは2年目なんですよ。5年下ってリアルに先輩と後輩っていう距離ががっつりとあるから、そうなったのかもしれない。気持ちいいんだと思いますよ、そういう後輩があんまりいないから。

酒井 語りたくなるんですよねぇ、お笑いを。

林田 最初メモを取るボケなのかなと思って『いいよ。メモ取らなくて』って言ったら、いや、取るでしょみたいな顔で僕を見てたんで、あぁ、これはもうダメだなって思いました。……あれ、なんの話してましたっけ?

――ネタが早く出来上がるかどうかを伺ってましたね(笑)。

林田 あぁ、そうでした。確かにちょっと緩んだ瞬間に(アイデアが)出てくるっていうのはわかります。まぁ、ネタ作りって地味っちゃあ地味ですよね。ずっと喫茶店にいて……ふたりで集まっても何も出ない日もあるし、ひとりで1日いて終わる日もある。その繰り返し。コーヒー代ばっかり払って帰ってますよ。

――ネタを作るとき、それぞれのこだわりみたいなものは反映するほうですか? 例えば、こういうことを主張したいからネタにセリフとして入れたいだとか。

林田 過去にそういうパターンもあったと思います。酒井がドッキリかなんかで言ってた言葉がよくて、そこから考えたりとか……今のは特殊なパターンですけど、設定っぽいところから考えることが多いですね。

酒井 僕からもこれがやりたいとか、あれがやりたいって伝えることもあります。自分が面白いのかどうかよくわかってなくて……でも今イケる気がしてるんですよね。『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』の七変化で、もしかしたら俺って天才なんじゃないかなと思い始めちゃって。今、驕り高ぶってるんですよ。

林田 我慢できなくて、自分から言っちゃってるじゃん(笑)。待ってりゃあ聞いてくれたよ? そういう質問はあったと思うよ?

――(笑)。名物コーナーの七変化で18年ぶりに最高記録を出されて、マネージャーさんも泣いてらっしゃいましたね。

酒井 はい、涙、涙でした。そうやってやりたいこともやらせてもらってるんですけど、単独ライブではやりたいことをより詰め込めたらいいですね。もちろんウケたいっていう気持ちはあるんですけど、自分らでこれをやりたいとか、ウケたいからやるっていうネタで笑ってもらえるのが一番なんですよ。けど、その塩梅は……いまだに悩みます。自分の表現したいものを選ぶのか、世間の受け取るものを選ぶのかどうかっていうのはね(と話しながら、だんだんと“何を言ってるんだ、自分は”という顔になっていく)。

林田 ふふふ……表現者として、そう思うんだ。芸術家だなぁ。

酒井 芸術に近いです、お笑いは。アートだから。

林田 あはは! この発言は酒井だけのものです。僕とは切り分けてほしい! 僕にとってお笑いはお笑いです。

ザ・マミィさんへのインタビュー記事は、発売中の『+act. (プラスアクト) 2023年4月号』に全文掲載されています。