クールな佇まいとはっきりとしたものいい、そして洞察力と着眼点に長けたネタで人気を集めているピン芸人・ヒコロヒー。「20代まるっと売れてなかった」と語るが、今やレギュラー番組は数知れず。ドラマやCMへの出演、コラムや書評といった執筆活動など超多忙な日々を過ごしながら、毎月、いろんな試みをする新ネタライブ『試し卸し叩き』を主催するなど、欠かさずネタを作り続けている。

そんな彼女は来年1月、11回目となる単独ライブ『返せよ』を東京・銀座 博品館劇場で開催。インタビューでは一つひとつの質問に丁寧に返答しながらも、胸の内をなかなか明かしてはもらえなかったが、少ない言葉のなかに芸人という仕事に対する誠実で真摯な姿勢が垣間見えた。

※本記事は『+act.(プラスアクト)2023年1月号』(ワニブックス:刊)より、一部を抜粋編集したものです。

賞レースを気にせずできる初めての単独ライブ

――一昨年、芸歴10年目を迎えて開催した単独ライブでは、ベストネタと新ネタを披露されていましたね。そして、今回は今までとはまた少し違ったかたちの単独ライブになりそうですけれど。

ヒコロヒー そうですね。全ての賞レースを卒業してから、初めての単独ライブになりますからね。賞レースでのボケ数がどうだとかを一切気にすることなく、自分が好きなネタをやれるかなという感じがあります。これまでは本当に100パーセント、賞レースで通用するネタを作るための単独ライブだったので。そこはどの芸人もそうなんでしょうけれど、私も今まではそういう感じでネタを作ってきたので、今回は仕上がりが変わってくるだろうなとは思っています。

――今は11月下旬ですが、ネタはすでに作り始めてはいるんですか?

ヒコロヒー もちろん、はい。

――いかがですか、進み具合は。

ヒコロヒー まぁ、ぼちぼちですかねぇ。開催までにまだ2カ月ぐらいあるので、ここからいよいよ佳境というか、本腰入れてやっていこうかなという感じです。

――いつも早めに取りかかられるんですか?

ヒコロヒー 早めの相場がどれくらいなのかはわからないですけど、だいたい、半年ぐらい前から始まります。もちろん、劇場をどこにするかとかも全部含めて、ですけれどね。で、やる会場が決まってから、うっすらとずーっと頭の隅にネタのことがあるという感じです。

――今回はどんな単独ライブになりそうですか?

ヒコロヒー まぁ、その辺りは来ていただいてのお楽しみです。

――ちなみに、なぜこのタイトルにされたのですか? これまでとは少し趣が変わった印象を受けたのですが。

ヒコロヒー いやぁ……でも、いつもこういう感じですよ。“なんとか”っていうひと言でつけているので。

――1月に単独ライブを控えながら、9月から毎月、『試し卸し叩き』という新ネタを下ろすライブも開催されていますよね。単独ライブに向けてのネタ作りもあるなかで、新しいネタを毎月作り続けるのは大変な気がするんですけれど。

ヒコロヒー そっちは単独とはまた違うかたちのライブなんですけど、なんかそういう気分だったんだと思います。ちょっと(新ネタライブを)やりたいな、みたいな。もちろん大変は大変なんですけど、その大変さも含めて楽しいからやっているだけですね。