クールなボケと備中神楽の囃子をアレンジしたツッコミが特徴的な漫才で、メディアでも活躍中の東京ホテイソン。昨年開催された全国ツアー『東京ホテイソン第1回単独公演「洒落柿」』の大阪公演を収録したBlurayでは、漫才のみならずコントも披露している。

相方募集掲示板で出会ったという二人。ネタではのんびり屋に見えるショーゴだが、計画的かつ戦略的にコンビを引っ張ってきた。一方、しっかり者の印象が強いたけるは「運だけでのらりくらりと生きてきた」と笑顔で語る楽天家。すでに決定している今年の全国ツアーでは、そういった隠れた二人の関係性も、ネタを通して見てみたいところだ。

※本記事は『+act.(プラスアクト)2023年2月号』(ワニブックス:刊)より、一部を抜粋編集したものです。

賞レースを気にせずできる初めての単独ライブ

――初めての全国ツアーがBlurayとして発売された率直な気持ちを聞かせてください。

たける 親も喜んでますし、1回目っていうのは一度しかないですから。そういう単独ライブが形に残るというのは、めちゃくちゃうれしいですね。

ショーゴ 自主ライブは何回かやったことがあったんですけど、単独ライブ自体は初めてで。プロの音響さんとかついてもらって、ちゃんといいものができたなと思いましたし、形に残って……芸人やってるなぁって思いました。お笑いはDVDで見てた世代だったから、余計にうれしかったですね。

――どんな方のDVDを見てたんですか?

ショーゴ ダウンタウンさん、さまぁ~ずさん……TSUTAYAやGEOにあるお笑いDVDを片っぱしから見てましたね。

たける あぁ、そうなんだ。僕はあんまり見てないんですよねぇ。芸人になってから、バナナマンさんのDVDを見て。幕間のVTRで日村さんが3秒でコーラを飲むっていうのを延々やってたんですけど、マーライオンみたいに綺麗に吐き出してたんですよ。それを見て、腹抱えて笑った記憶があります。僕らも今回、単独だからできることをいろいろとやったので、いろんな人に見てもらえたらうれしいですね。

――単独ライブと自主ライブ、全体の構成作りは全く違うものでしたか?

ショーゴ 作り方というより、関わった大人の数が明らかに違いましたよね。自主ライブだと音響も後輩にやってもらったりしてたのが、今回の『洒落柿』っていうタイトルに合わせて、ポスターもオレンジと緑をベースに作ったりして。あと、照明さんのアイデアで、ライブ中にオレンジと緑の光がふわっと入るようにしてもらったりもしました。

たける あと、垂れ幕だっけ? 幕間カーテンだっけ?

ショーゴ そう。その色もオレンジと緑だったり、スタッフさんもこだわってくれて。

たける 全10公演やってて、僕らがそれに気づいたのは8公演目くらい。だいぶあとでしたけどね(笑)。

ショーゴ そうだったの? ってびっくりして。自分たちだけでは考えつかないようなこともやってもらって、ありがたかったですね。

――コンビ結成9年目で初めて単独ライブ、そして全国ツアーをやってみようと思ったのは?

ショーゴ 本当は2020年にやる予定だったんですけど……。

たける コロナの影響があって延びたっていうわけでもないんですよ。当時、2~3カ月に1回、新ネタを下ろすライブをやっていて。やろうとは言ってたんですけど、どっちかが具体的に動くわけでもなく……結果、マネージャーがいろいろと手はずをとってくれて実現したという感じですね。

ショーゴ ただ単に単独ライブのやり方がわからなくて。

たける そうそう。自分たちで始めると最後まで責任を持ってやらなきゃいけないのも、ちょっと面倒くさいじゃないですか(笑)。

ショーゴ マイナス発言!

たける 任せられるところは任せたほうがいいかなと…… ねっ!(マネージャーさんのほうを振り向く)

――今、無理やりマネージャーさんたちに「うん」と言わせましたね(笑)。実際、全国を回ってみて、どんなことを感じましたか?

たける シンプルに“あぁ、こんなに見に来てくれるんだ”って思いました。僕らがテレビに出させてもらったタイミングが、ちょうどコロナと被ってたので、営業もそんなになかったですし、地方ロケもそんなにできなかったんです。だから、どれだけの人が僕らのことを認知してくれているのか、わかってない状態だったんですけど、たくさんの方が来てくれたのは、ひとつ数値化されたというか、うれしいなと思いましたね。

ショーゴ 東京と大阪は、お笑いファンが多い場所だから来てくれるだろうとは思ってたんですけど、地方4都市はめっちゃ怖かった。だから、多くの人が来てくれたのはうれしかったです。

たける 僕の地元である岡山でやるのも感慨深かったんですけど、一番やりづらかったですね。(客席が)知り合いばっかりになっちゃって……総合的に地元が一番スベりました(笑)。知り合いが来てくれるのはめちゃくちゃありがたいんですけど、難しさも感じて。いろいろと勉強になりました。場所によってウケるタイミングも違うし、ここは伝わらないんだな、と思うところとかもあって。

ショーゴ 大阪は漫才はウケるけど、コントは普通で。名古屋と博多は中間的な感じだったんですけど、仙台は逆にコントのほうがウケて、漫才だと伝わってないところもあったので、次に活かしたいですね。あと、2022年は単独で新ネタがちゃんとできたのも大きくて。

たける 単独をやってなかったら、はたして2022年、新ネタ何本作ってたかなって話だよね。

ショーゴ うん、そうだね。ネタ作りする時間が取れなかったので、単独で作ったネタでテレビや『M-1』に出られたのはよかったですね。

――今までになかった仕事が増えると、時間の使い方も変わってきますよね。

たける そうなんですよ。もちろん錦鯉さんとかに比べたら全然忙しくはないんですけど、昔の自分たちと比べると忙しくさせてもらっているので、時間の使い方が難しくて。ただ、単独を開催するとなると、絶対にネタは作らなきゃいけないじゃないですか。だから、そういう機会があってよかったです。

ショーゴ ネタも初日の1カ月前には、ほぼほぼできてたしね。

たける いろんな人から優秀だって言われました。同じ事務所のゾフィーさんは、よく単独をやってるんですけど、いつもギリギリなんですよ。1週間前にサイトウ(ナオキ)さんは上田(航平)さんから全部の台本をもらって、憶えたものが3日前にやっぱりやめるってなることもざらにあるらしくて。

ショーゴ 立って合わせてみたら全然違ったってことが、芸人はめっちゃありますからね。

たける 僕らは単独までに新ネタ2本くらい、ライブでかけて。

ショーゴ 7本くらいあったんですけど、2本くらいは事前にライブでやってたんで、ストレスなくやれましたね。だって失敗できないじゃないですか、初めての単独は。

――単独ライブ=新ネタを披露する場だと思っていたので、その考え方は新鮮です。お二人とも石橋を叩いて渡るタイプですか?

たける 7~8本ネタをやる、しかも1時間半、僕らしか出ないライブがほぼ初めてだったんでね。新ネタライブだったら会場も200人くらいですけど、単独ってなると400人くらい入るしっかりした劇場でやることになるので、いろんなことを加味した結果、事前に試すことにしたんです。

ショーゴ (単独前のライブで)新ネタをかけていいかって聞いたら、たけるもふたつ返事でした。

東京ホテイソンさんへのインタビュー記事は、発売中の『+act. (プラスアクト) 2023年2月号』に全文掲載されています。