気圧の変化によって頭痛などの不調が引き起こされる「気象病」。そこに着目した体調管理アプリ「頭痛ーる」をご存知ですか? 累計ダウンロード数1000万を突破している大ヒットアプリから、初の書籍『月間100万人利用アプリ!頭痛ーるが贈るしんどい低気圧とのつきあいかた』(新潮社)が発売されました。

そこで、開発チームに在籍する気象予報士の飯山隆茂氏、デザイナー・プロダクトマネージャー・キャラクターデザイン担当の安中朋哉氏に、「頭痛ーる」に込められた思いや人気アプリになるまでの道のりについてインタビューしました。

▲『月間100万人利用アプリ! 頭痛ーるが贈る しんどい低気圧とのつきあいかた』(新潮社)

“気象と頭痛の関係性”と言われても調査したものがなかった

――「頭痛ーる」とは、どんなアプリなのでしょうか。

飯山隆茂(以下、飯山) 頭痛ーるは、気象や天候の変化によって体調が悪くなる「気象病」に悩む方に向けて開発されたアプリです。低気圧が近づくとお知らせをするアラートや、気圧の変化を表すグラフの機能が搭載されているほか、痛みや薬の服用も記録できますので、体調管理にも役立ちます。

――どういった層がメインユーザーですか?

飯山 20〜30代の女性のユーザーが多いです。月経によるホルモンバランスの変化も頭痛の一因になっているだけに、男性に比べ女性のほうが片頭痛の悩みを抱えている割合が高いという調査結果もあるので、頭痛ーるユーザーも女性が全体の約85%を占めています。

――どのようにして開発されたのでしょうか。

飯山 頭痛ーるは2012年に開発がスタートし、2013年にリリースされました。今年の4月でサービス開始から10年となります。開発のきっかけは、弊社に在籍していた気象予報士が、入社前に“気象と頭痛の関係性”をテーマに研究をしていて、そのアイデアをもとにアプリを作りたいと提案したことです。

当時はまだ我々も、気象と頭痛の関係性と言われても具体的に調査したものがありませんでしたので、まずは社員10名に協力してもらって、頭痛が起こるタイミングなどを記録してもらいました。その結果、半数以上が定期的に頭痛になることがわかり、気圧変化との関連も見えてきたのです。

▲「頭痛ーる」開発チーム・気象予報士の飯山隆茂氏

安中朋哉(以下、安中) 私も10人のうちの1人としてテストに参加していましたが、気象病について初めて聞かされたときは、正直「迷信っぽくて、本当かな?」と半信半疑でした(笑)。

しかし実際に頭痛の記録をつけ、結果を他の社員と照らし合わせてみると、そのタイミングが一致していたうえに、気圧の変化に連動して痛みが発生していることがわかり、驚きました。

▲「頭痛ーる」デザイナー・プロダクトマネージャー・キャラクターデザイン担当の安中朋哉氏

――今では頭痛ーるの愛用者も多いですが、リリース当時の10年前は、まだ気象と体調を関連づける発想を持っている人が少なかったように思います。

安中 そうなんです。なので、開発当初は「気象病をいかにして世の中の方々に知ってもらうか」ということを最大のミッションとして掲げました。

――アプリ開発にあたり、どんなことを意識しましたか。

安中 まずは、かつて私自身も思っていた“気象病に対する「本当かな?」ともすれば胡散臭いものになりかねない世間の印象”を取り払うための工夫を考えました。その結果、多くの人が見慣れている天気予報に近いビジュアルを設計して、気圧と頭痛の関係を示す形に至りました。気象病に既視感を持ってもらうことにより、“昔から存在すること”であるように表現したかったのです。

また気圧をグラフ化したのは、一日のうちに大きく上下する気圧を“見える化”することで、頭痛との関連性がよりわかりやすく実感できるように、という意図からです。私たち社員がテスト段階で感じた「気圧と頭痛って、本当に関係があるんだ!」という驚きと納得を、ユーザーの方にも体験してほしかったんですよね。

それから、気象病が起こるメカニズムについて紹介するコーナーも設けました。気圧が変化するとなぜ頭が痛くなるか、しっかりとエビデンスを示しながら紹介することで、単なる迷信ではないことを伝えようと。

――私自身も気象病を意識するようになったのは、頭痛ーるユーザーの声をSNSで見かけるようになってからでした。こうしたSNSでの展開も、気象病が世に知られるために重要な動きだったのではないかと思います。

安中 SNSでの拡がり方は、当初の想定以上でした。特に、一つの事象を大人数が観測しながら盛り上がるような文化があるTwitterは、頭痛ーるとの親和性も高く「今日は気圧が低いから、頭痛ヤバい」といった呟きもだんだんと増えていきました。