2023年3月18日(土)から甲子園で行われていた第95回記念選抜高校野球大会。今年も熱戦が繰り広げられた。

▲高校球児たちの聖地・甲子園 写真:アラヤシキ / PIXTA

全国から集まった36校のなかから優勝を掴み取ったのは、山梨県代表の山梨学院。山梨県勢で春夏を通じて初の優勝となった。

今回は優勝した山梨学院、準優勝の報徳学園、昨年秋に行われた明治神宮大会で強さを見せていた大阪桐蔭、広陵、仙台育英を中心に大会を振り返っていく。

エース1人にマウンドを任せた山梨学院

2020年から日本高校野球連盟の決定により球数制限が設けられてから、各高校が2番手から3番手の投手を育成に力を入れている。そんななかで、山梨学院(山梨)はエースの林謙吾(3年)が全6試合に先発し、51回2/3を投げた。

現代の高校野球では非常に珍しい投手起用だったが、準決勝終了時点で決勝戦は160球まで投じることが可能だった。

これは日程も林を後押しした部分が大きい。

山梨学院は、開幕日の第一試合だった。また雨による雨天順延も重なり、連投は準決勝と決勝の2試合のみ。

その林はコントロールの良さがずば抜けていた。56回2/3を投げて四死球はわずか6。落ちるボールと外角の直球で三振を奪っていった。

決勝では、山梨学院とは真逆の投手運用(継投)を見せていた報徳学園の投手陣を5回に打ち崩して、7対3で逆転勝ち。見事、初優勝を成し遂げた。

山梨学院は夏に向けて、追われる立場になるが、この林以外の投手陣の底上げができるかが鍵になっていくだろう。

劇的な勝ち上がりを見せ準優勝に輝いた報徳学園

準優勝に輝いた報徳学園(兵庫)は、山梨学院とは真逆で継投策で勝ち上がってきたチームだ。

エースの盛田智矢(3年)や今朝丸裕喜(2年)、間木歩(2年)の3投手を先発からリリーフまで、バランス良く登板させながら勝ち上がった。

初戦の健大高崎(群馬)戦は、盛田と間木の継投で勝利し波に乗る。チームは3回戦で当たった東邦(愛知)との対戦から接戦続き。

東邦戦は序盤から試合を優位に進めていたものの、疲れが見え始めた先発の今朝丸が打ち込まれ、試合終盤に追いつかれる展開。

しかし、間木や盛田の好リリーフもあり、10回にサヨナラ勝ちで準々決勝進出を決めた。

準々決勝の相手は仙台育英(宮城)。育英は昨年夏の甲子園優勝メンバーを揃え、投手陣の層も厚かった。

ただ、序盤に先発の仁田陽翔(3年)から3点を奪い、試合を優位に進める。

最終回に追いつかれ、タイブレークも仙台育英に流れが行きつつあるなかで、最後は相手のエラーと山増達也(3年)のタイムリーで、逆転サヨナラ勝ちを決めた。

準決勝の大阪桐蔭(大阪)戦は、大逆転勝利だった。

5点差をつけられた3回裏の攻撃で2点を返す。その後は、間木と今朝丸の好リリーフで相手の勢いを食い止めた。

大阪桐蔭の南恒誠(3年)に疲れが見え始めた7回に一気に攻め立て、同点に追いつく。さらに、8回には近畿大会決勝で完封された前田悠伍(3年)から2点を奪い、逆転勝利。

この試合を見ると、2試合連続サヨナラ勝ちをした報徳学園を球場の雰囲気が後押ししていたのも、大きかっただろう。