前回大会のリベンジ! 日米頂上決戦となった決勝戦

決勝は前回王者アメリカ合衆国と今大会全勝で勝ち進んだ日本の顔合わせとなった2023 WORLD BASEBALL CLASSIC。

試合前に大谷翔平は「今日1日は憧れるのをやめて勝つことだけ考えていきましょう」とチームの士気を高める一声を発する。今大会は大谷が先頭に立ちチームを鼓舞してきたが、その集大成とも言える場面だった。

先制点を取ったのは王者・アメリカ。2回にトレイ・ターナーが日本の先発・今永昇太からソロホームランを放った。日本はその裏に、準決勝でサヨナラ打を放った村上宗隆のソロホームランで追いつく。

その後も前年メジャーリーグで13勝を挙げたメリル・ケリーを攻め立てる。

岡本和真のヒットから源田壮亮が続き、中村悠平が粘りに粘って出塁して、満塁のチャンスを作りマウンドから引きずり下ろす。

2番手・変則左腕のアーロン・ループから、ラーズ・ヌートバーがファーストゴロを放ち、その間に勝ち越しに成功。この回は、今大会で各国から得点を積み重ねた下位打線からのチャンスメークも見られた。

2番手の戸郷翔征は、メジャーリーガーが揃う打線に対し、ランナーを出しながらも決め球のフォークを活かしながら抑える。捕手の中村のリードも四球やワイルドピッチを恐れず、フォークを活かしたリードも素晴らしかった。

最終的に2イニングを無失点に抑え、第二先発としてこのうえない結果を残した。

それに応えるように、巨人でチームメイトの岡本が今大会2本目となるソロホームランで追加点をあげる。

3番手は、高い奪三振率を誇る最年少の髙橋宏斗。

5回の先頭打者であるムーキー・ベッツに不運な内野安打を許すも、後続を2者連続三振に抑える。その後、ヒットを許すもカイル・シュワーバーをセンターフライに抑えた。

4番手は国際大会に強い伊藤大海。

アメリカ打線に臆することなく淡々と投げた。ここでも強心臓ぶりを発揮した伊藤は、三者凡退に抑えアメリカに流れを与えないピッチングを見せた。

5番手は今大会フル回転の活躍を見せた大勢。

しかし、本来のピッチングからは程遠い内容に。それでも、フォークをうまく使いながらピンチの場面を併殺打で締めた。このプレーでは、山田哲人と源田の二遊間だからこそ併殺打をスムーズに取れたと言ってもいいだろう。

8回はダルビッシュ有がマウンドにあがる。

しかし、シュワーバーにソロホームランを浴びて1点差に。今大会、本調子から程遠い内容となっていたが、ここでも手痛い一発をくらった。ただ、後続を抑えてなんとかリードして8回を投げ切る。

そして、最終回の9回は今大会文句なしの活躍を見せた大谷翔平がマウンドに上がる。

四球でランナーを出すものの、ベッツを併殺打に打ち取り、二死にする。最後はチームメイトであるマイク・トラウトを三振にきってとり、世界一を奪還した。

まさに死闘だった。準決勝と同様に先制を許す展開だったが、日本らしい大技と小技をうまく組み合わせた野球で、スコアをひっくり返して世界一に輝いた。

▲優勝を決め、抱き合う侍ジャパンの選手たち 写真:AP/アフロ

世界最高のプロ野球選手・大谷翔平を中心として、大会を通して強くなっていくのが感じられる素晴らしいチームだった。

監督である栗山英樹氏は、不振にあえいだ村上宗隆を信じ続けてスタメンで起用。それが最後の活躍に結びついたのだろう。

さらに、準々決勝では打順を変更。4番に吉田正尚を置き、5番村上宗隆、6番岡本和真にして、スムーズに得点できるようにした。

また準決勝は、決勝のことは考えず、投手起用においてスマートさをなくして絶対に勝つための起用をし、佐々木朗希から山本由伸へのリレーを見せた。

その投手陣をリードに定評があり、打撃面ではイヤらしさもある中村悠平が正捕手として引っ張った。ここぞの場面では大谷がチームを鼓舞しつつ、最後の最後に代走の切り札・周東佑京を起用し、泥臭く逆転勝利。

決勝では、準決勝とは打って変わり、若手投手陣の小刻みな継投でアメリカ打線を抑えて、北海道日本ハムファイターズを日本一に導いた2016年を彷彿させる采配で世界一に導いた。