憧れよりも「共感」を大切にしていきたい
――今も実際に着られていますが、酒村さんのグッズについて制作する際のこだわりなどを教えてください。
酒村 「自分が欲しいものを作りたい」っていうエゴではあるんですけど、一貫してお酒がテーマになっています。洋服は、家はもちろんのこと、カップルでも着られますし、外でちょい飲みするときもラフに着られると思うんです。
「ちょっと飲みに行くときに着ていきたくなっちゃうデザイン」の服を作りたい気持ちがあったので、イラストは自分が好きなイラストレーターさんにお願いして、細かく描いてもらっています。昭和レトロな、ゼロ年代くらいのイラストが好きなので、懐かしさのあるイラストでお願いしています。
――これから作りたいと思っているものはありますか?
酒村 ちょっと大変そうって理由で、おつまみやお酒は作ってこなかったんですけど、今年はトライしたいなと思っています。リュウジさん(料理研究家)が「こういうの作ってみなよ」って後押しをしてくれているので、相談させてもらっています。
それから、飲むのはもちろん、小物としてもかわいいと思った「瓶ビール」に関しては、ラベルにもこだわって今年中に作りたいと思っています。
――最近の動画には「イッモ」こと妹さんも出演するようになりましたね。
酒村 いつもの動画は表情がそんなになくて、人となりがわかりづらくいのに対して、妹がいると掛け合いがあるし、ツッコんでくれるので素が出るんです。そういう人間らしい部分が映っていたのか「掛け合いが面白い」「酒村家といると楽しそう」「妹もいとこもキャラがいい」っていうコメントがたくさんあったので、定期的に織り交ぜて、自分も人間ということを発信しています。
――たしかに、コラボ動画では泥酔している様子などが見られるので、まさに「ありのまま」だなと思いました。
酒村 1人で泥酔している動画は恥ずかしいから載せていないんですけど、仲間たちと楽しい飲み会をした動画はおもしろいから載せてますね。二日酔いがツラかったので、最悪な思い出みたいになったんですけど「ちゃんと楽しかった自分もいるんだぞ」って浄化するために出しています。
――「ありのままの姿」で発信していこうと決めた理由は?
酒村 無印良品系みたいな動画は、そういう生活を送っていないから物理的に撮れなかったんです。そういう動画を撮ってみようと思って、無印良品の鉄フライパンを買ってやったこともあるんですけど、真っ黒焦げの隕石みたいのが出来上がったので「物理的に撮れない」っていうことがわかりました。
それで「ありのままでいいかな」と思ったんです。自分の生活のことを発信しているのに、ありのままじゃない生活を見せても矛盾が起きますしね。「みんな似たような生活をしてるんでしょ」っていうことで、ありのままのスタイルにしたら共感してくれる人がいて、それが数字になったので結果よかったです。
――チャンネル登録者数を見れば一目瞭然ですね。
酒村 憧れ系だとHIKAKINさんみたいな“ザ・ユーチューバー”じゃないですか。共感に関するブイログ系でそこまで伸びてる人がいる印象はなかったんですけど、共感やあるあるを突き詰めていくと、やっぱり頑張れるといいますか。憧れまでは届かないけど、ここまで視聴者の方が集まってくれるんだっていうことで、共感は大切にしていきたいと思っています。
新社会人には「自分を回復する技」を取得してほしい
――酒村さんはYouTubeや作家、アーティストとして活動されていますが、現在の肩書は何になるのでしょうか。
酒村 YouTubeに動画を上げているだけなので、自分でYouTuberって名乗ったことはないですね。かといって、何もないのもなーっていうことで「酒テロクリエイター」っていう名称を作ったんですけど、肩書きを聞かれることってあまりないので使われず……。だから、いいとこ取りで作家って名乗っています(笑)。これから小説も出しますし「ネオ作家」でもいいですね。
――ネオ無職からネオ作家になったってことですね!
酒村 もちろん自分の中では「永遠のネオ無職」なんですけど、チャンネル登録者みたいに数字があると信ぴょう性がないじゃないですか。「うそつけー!」ってなるかなと思って、あまり使えなくなっちゃいましたね。それに「酒飲み独身女」のほうが、より共感ポイント高くて動画的にも反響が良かったので、言い方を変えて今はネオ作家です!
――最後に、新卒で入った会社を半年で辞めてYouTubeを始められた酒村さんから、新社会人に向けてメッセージをお願いします。
酒村 社会に出ると、否応なしに我慢や責任を負わされる宿命なので、「耐える」っていう防御力はどんどん育っていくと思います。でも、防御力が高いイシツブテも攻撃され続けたら倒されちゃうじゃないですか。だから、まずは自分を回復する技を取得してほしいと思います。それを取得した結果、自分はこうなりました。
自分を守るには、まず自分のことを好きになってあげないといけないので、自分のことを好きになるところから始めてください。そして疲れたりツラくなったら、とびっきりおいしいものを食べたり、ちょっと高いお酒を飲んだり。そうしていると、本当に疲れたら「会社と逆方向の電車に乗って海に行っちゃおう」って選択肢を取れるようになると思うので、とにかく自分のことを好きになってほしいなと思います。
――酒村さんらしいメッセージをありがとうございます。ちなみに……会社と逆方向の電車に乗ったのは実話ですか?
酒村 会社にはちゃんと行きました。学生の頃に、学校と逆方向の電車に乗って江ノ島に行ったことはあります(笑)。
〇酔いとゆくすえ ~酒村ゆっけ、小説コミカライズ短編集~[ComicWalker]