おじさん会社員として生きる楽しさは?

むろん、男性でも病気や左遷などの負けた経験をきっかけに、椅子取りゲームから自ら撤退し「仕事人」に舵を切る人もいます。

自動車メーカーを定年退職し、現在は個人事業主として技術コンサルタントをしているクロイワさん(仮名)もそのひとりです。

【証言】元自動車メーカー勤務のクロイワさん(仮名)60代後半

「私は50歳のときに左遷されました。特許取って、ヒット商品出して、傾きかけた会社を救ったのは俺だ!って自負がありましたから、半年間くらいは腐ってました。で、気づいたんです。ああ、プロジェクトは成功させたけど、技術移転をしなかった僕には居場所がないんだってね。私は一匹狼を気取っていたんです。

結局、最後は品質管理に行かされたんだけど、不思議と会社員生活でこのときが一番楽しかった。自分が培ってきたノウハウを後輩に教えて、サポートしてね。負け惜しみではなく、こういう経験を最後にさせてくれた会社に感謝しています」

負けたクロイワさんは、“会社の中の自分”ではなく、半径3メートルの人間関係を充実させました。人間ならではの「教育=愛」で、ただの人としてつながりました。

おばさん会社員がそうであるように、会社員でいながらも技術屋=仕事人として生きる選択をしたのです。

▲半径3メートルの人間関係を充実させるのが大切 イメージ:Komaer / PIXTA

「自分の仕事をきちんとする」という行為は、会社や上司の期待に応えることではありません。当然、自分勝手に好き放題やることでもない。

会社員としての自分に誇りを持ち、自分の仕事に誇りを持ち、「人間の本性=愛」をケチらない。それが私の言う「仕事人」です。