明るい未来を目指し、ビジネス書に解決の糸口を探そうとしても、世にあるビジネス本、自己啓発本は若者向けのものばかり……。今こそサラリーマン無理ゲー社会における“40歳役職なし版”の人生攻略法が必要だ。健康社会学者として900人を超える働く人々へのインタビューをフィールドワークとしている河合薫氏が教えます。

※本記事は、河合薫:​著『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか -中年以降のキャリア論-』(ワニブックスPLUS新書:刊)より一部を抜粋編集したものです。

おばさん会社員がしぶといわけ

多種多様な職種、老若男女の人たちにインタビューをして、気がついたことがあります。それは「おばさんはしぶとい!」ということです。

彼女たちは「第二の人生(という言葉をおばさんはよく使います)」を輝かせるために、決して努力を惜しみません。会社の期待を満たす人生ではなく、自分の人生を生きていました。ぶっちゃけ「会社が〜」とか、どうでもいいのです。

ある人は「キャリアカウンセラーの資格を取ったんです」とはにかみ、ある人は「ロシア語の勉強を始めたんです」と楽しげに話し、ある人は「大学院に行きたいと思ってるんですけど、やっぱり大変ですか?」と私の経験を知りたがりました。

同年代のおじさんたちが「役職定年が〜」「雇用延長が〜」と、会社という組織での立ち位置や立場にこだわるのと対照的です。 

東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会のトップ、森喜朗会長(当時)の“女性は会議が長い”発言では「わきまえない女」という言葉が話題になりましたが、会社組織では、とかく“わきまえる”振る舞いが求められます。

上司部下、先輩後輩、親分子分といったタテの序列が重んじられ、「自分より目上の人を尊重する=自分の意見を言わない」が美徳で、時々おっちょこちょいが“上”に異を唱えようものなら、そりゃもう大騒ぎです。場の空気は一瞬で凍りつき、いや〜な緊張感で埋め尽くされます。

すると、ゴマスリ・ヨイショを得意技とする部長クラスのスーパー昭和おじさんが「キミは組織がわかってないんだよなぁ」とか「組織の論理ってものをもう少し考えないと」など、ごもっともらしく言い放って、“上”のご機嫌取りに走ります。

「んじゃ、組織ってなんなのか?」ってことになるわけですが、それが“ジジイの壁”です。会社組織の上階に昇りつめた、あるいはそこに必死にぶら下がるスーパー昭和おじさんが、自分たちが築きあげた楼閣=組織を壊されたくない、壊されてたまるものか! という保身に満ちた感情が「組織の論理がわかってない」という言葉の真意です。

おばさん会社員は組織の外の存在としてずっと扱われてきましたから、「組織の論理など私には関係ございません」的な価値観が骨の髄まで染み込んでいます。

▲「組織の論理など関係ない」“おばさん会社員”は強い イメージ:freeangle / PIXTA

なにせ、25歳を過ぎた途端に「クリスマスケーキ」と呼ばれ、後輩が寿退社しようものなら「先を越されちゃったね〜」と耳元で囁かれ、「それが何か?」と言いたい気持ちをグッと抑えてきた世代です。言うだけ無駄とばかりに昭和おじさんたちの戯言を手のひらで転がしてきました。

彼女たちは“女性”という自分ではどうしようもない属性で、はなから強制的に“負け”させられてきました。その負けた経験が、女性たちの受容する力と生き延びるたくましさにつながりました。女性たちの「会社の期待に応えても意味がない」という深い諦めが、好奇心や向上心をもたらしました。

おばさん会社員は「会社員」でありながら、「仕事人」として生きる選択をしたのです。