かけられているうちが幸せ
人としては嫌だけど、芸人としては嬉しかったりする仕事がある。
ドッキリにかかることだ。
ドッキリにかけられても、もちろん嬉しい顔をしてはいない。心の中でキャスティングしてくれたスタッフさんに手を合わせたとして、口汚い言葉で番組を盛り上げる努力をする。普通に考えたらダマされるのは嫌なのだが、その辺りの微妙なニュアンスを言葉にするのはとても難しい。
さらに、ドッキリにかかった時のリアクションは本当に難しい。
「あのリアクションは正しかったのか?」
「最初の言葉はあれでよかったのか?」
「もっと大きめの反応の方が良かったのか?」
「いや、むしろやりすぎて、クドかったのかもしれない」
収録後、すぐさま頭で反芻する。「どうでした?」なんてマネージャーに聞いてみたとしても、大体答えに困っている。そりゃそうか。正解っちゃあ正解だ。不正解だと決めつける事も容易だ。正解は一つではないんだから。
40歳過ぎるまで仕事がなかった芸人ゆえ、当然ドッキリ経験は多い方ではない。20代の頃からバンバンテレビに出ている売れっ子ならば百戦錬磨なのだろうけど、こっちは40歳の新人だから勉強が続く。
ドッキリにかけられている最中にも試練が待っている。一切気づかないことがほとんどだが、稀に「あれ? これはもしや…」と思う瞬間もぶっちゃけある。
その瞬間に焦り始める。どうリアクションをしたらいいんだろうと。
その時の私の体温をサーモグラフィーで見てほしい。緊張で手先は真っ青で、一方、脳みそはショートして真っ赤になっているはずだ。
そして、何の気の利いたリアクションをとることもできず、「編集」という神の力に身を委ねてトボトボ帰るのだ。
だが、ドッキリにかけられているうちは幸せだったんだと気付かされる日が来た。先日、ついに「仕掛ける側」のオファーが来たのだ……。