仰げば尊しわが師の恩
先生には躰道はもとより挨拶や礼儀、人としてどうあるべきかなど多くのことを教わった。時代が時代だったので殴られもした。八ヶ岳を登る競歩大会では、躰道部は100位以内に入れと言われたのに、躰道部は106位、107位、108位でゴールし、ゴール地点で仁王立ちする先生にひっぱたかれたこともある。
厳しくも愛のある先生だったから、熱のこもった指導をたくさんいただいた。おかげで俺はグレることもなく、短大にも推薦で行くことができて感謝している。
躰道は芸人になってからの俺を助けてもくれた。芸人を始めて、自分にしかできないネタはないかと模索していたある日、躰道の型をやりながらの「あるあるネタ」を思いついた。
『爆笑レッドカーペット』でネタを披露する機会にも恵まれた。当時、視聴率20%を超える人気番組だったから、その反響は凄まじく、大きな話題になった。しかし、その直後、当時やっていたブログに、日本躰道協会からクレームのメッセージが届いた。
「躰道をバカにしている。二度とお笑い番組で躰道をネタにするな!」
そんな内容だったと思う。芸人になって初めて出れた人気番組。やっと掴みかけたチャンスだったので、俺は顧問の先生に電話で泣きついた。先生は落ち着いた声でこう言った。
「今度、試合がある。躰道の役員が全員揃うから、そこへ来い」
指定された場所行くと、先生はみんなの前で頭を下げた。
「うちの教え子は決して躰道をバカにしてるわけではない。躰道を広めたいという気持ちでやってるんです。活動を許可してあげてください」
それからは抗議を受けたり、文句を言われることはなくなった。先生がいなかったら、今の俺はなかっただろう。
その先生も病気で亡くなってしまった。お通夜に行って、最期のお別れを言ってきた。先生ありがとうございました。
俺が誰かの人生に大きな影響を与えることができる日は、果たして来るのだろうか。
(構成:キンマサタカ)