全日本選手権で優勝
人との出会いというのは不思議なものだ。高校3年間、躰道(たいどう)を教えていただいた恩師に出会わなければ、俺は本当にどうしようもない人間になっていただろう。芸人としての師匠がブッチャーブラザーズさんだとしたら、人としての師匠は部活の顧問の先生だった。
躰道を知ってる人は少ないと思うので簡単に説明させていただくと、空手をさらにアクロバティックにした武道だ。躰は体(からだ)の旧字である。かの尾崎豊さんも幼少期に躰道の道場に通っていたそうで、確かに尾崎豊さんの歌では「体」と書くべき歌詞は、すべて「躰(からだ)」になっている。
顔面と金的以外はどこを蹴っても突いてもよく、実際に戦う実戦と、法形と言われる型がある。ごく普通の正面突きから、バク転バク宙蹴りみたいな大技まであるのだが、よく聞かれるのが「躰道ってケンカに使えるの?」という質問だ。
うまく答えられる自信がないが、使える技と使えない技は、たしかにある。街でケンカになったとして、さすがにバク宙蹴りは当たらないだろう。
また展開(てんかい)という競技も面白い。主役が1人、脇役が5人の6人で構成され、主役に襲いかかる5人の脇役を、主役がどう倒すかで採点される。どれだけダイナミックだったか、あるいは創造性があったかなどを競い合うのだ。
入部当初はバク転など全くできなかった俺だが、卒業する頃にはバク転、さらにバク宙もできるようになり、団体戦だが全日本選手権でも2種目優勝することができた。